湿った公園の中、薄暗い木々の隙間から漏れ出すわずかな光が、時折動く影を映し出していた。
公園はとても静かで、通常の賑わいはどこにも感じられなかった。
今は季節が移り変わり、ひんやりとした空気とともに、湿気が重くのしかかっていた。
ゆうたは、友人たちと訪れた公園での思い出を振り返りつつ、一人でその場に立ち尽くしていた。
午後の遅い時間、友人たちは先に帰ることに決めたが、ゆうたはそのまままだこの公園に留まることにした。
彼は、湿っぽい空気の中で心の底から何かを感じ取りたいと思っていた。
そんなことを考えながら、彼は公園の奥へと進んでいった。
すると、ふと不気味なことに気づいた。
ゆうたの影が、彼が進む道とは異なる方向に動いているのだ。
最初は目の錯覚かと思ったが、影は明らかに彼とは逆の方へと向かっていた。
ゆうたは思わず立ち止まる。
影はいつも彼の後ろにあったはずなのに、その影はまるで自分を呼び寄せるように動いているように見えた。
「こんなこと、あり得ない…」心の中でつぶやき、彼は再び動き出した。
だが、影はますます彼を惹きつけるように、ゆうたを振り返らせようとしていた。
恐怖感が徐々に彼の心を満たしていく。
「帰るべきだ…」そう思った時、影が再び何かを告げるかのように、薄暗い道を急に走り出すように感じた。
ゆうたは意を決してその影を追いかけることにした。
影は湿った道をにじませながら進んでいく。
だが、彼が追いつこうとすると、影はすぐに次の木々の間に消えてしまった。
ゆうたは驚きと興奮の入り混じった状態で、その影を追い続けた。
まるで特別な何かに導かれているかのようだった。
やがて、彼は公園の奥深くへと導かれる。
辺りには人の気配はなく、ただ湿った空気だけが彼を包んでいた。
すると、突然、ゆうたは一つの小さな池に辿り着く。
水面は穏やかに揺れていたが、彼の影はそこに映っていなかった。
異様な感覚を抱きながら、彼はふと池を見つめた。
「あれは…何だ？」水面には、彼の顔ではなく、誰か別の人の顔が映っている。
ゆうたは驚き、後ずさりしようとしたが、足が動かなかった。
水面の中の顔は、ゆうたに向かってゆっくりと微笑みかけている。
その瞬間、頭の中に響く声がした。
「見なければならない。見続けるんだ。」
ゆうたは恐怖心に駆られながらも、その顔から目が離せなかった。
まるでその水面が彼を引き込もうとしているかのようだった。
「帰らなければ…」心の中で叫びながらも、身体は動かない。
すると、ゆうたは急に背後から冷たい手が肩に触れるのを感じた。
振り向くと、そこには薄暗い影が佇んでいた。
その影は、動くこともなく、ただ彼を見つめていた。
ゆうたは恐怖で声を上げることもできなかった。
彼はその影が何を意図しているのか全く理解できなかった。
その瞬間、影は一瞬の隙をついて、彼を水面の中へと引きずり込もうとした。
ゆうたは必死になって逃げようとし、ようやくその影から抜け出した。
彼は心臓がバクバクし、自分が今いる場所を見失ったような感覚を感じた。
再び公園へ戻るために必死に走り、ただ一心不乱に帰路を急いだ。
家に帰り着いたゆうただが、彼の心にはあの湿った池の映像と影が残り続けていた。
そして、どこかの暗闇から彼を見つめる目を感じていた。
しかしその影の正体や意味は、決して明かされることはなかった。
彼は今も、あの公園へは決して足を運ぶことはなかった。
心の底から恐れていたからだ。
影は、彼の帰りを待っているのかもしれなかった。
