「影に誘われた足跡」

ある神社の境内に、古くから神が祀られている社がありました。
その神社の名は「夜見神社」。
長い間、地元の人々に信仰されていましたが、最近では参拝者も減りつつありました。
そんな時、ある大学生のサトルは、友人たちと肝試しのために夜見神社を訪れることに決めました。

サトルたちが神社に着くと、あたりは静けさに包まれていました。
薄暗い境内には、月明かりが神社の石灯籠をかすかに照らしており、不気味な雰囲気を醸し出しています。
「ここが肝試しのスタート地点だな」と仲間の一人が言いました。
みんなは緊張しながらも、興味津々でその場に立ち尽くしました。

サトルが社の前に近づくと、何かを感じることがありました。
そこには、いつもと違う湿った空気が流れていて、まるで誰かが彼を見つめているような感覚がしました。
考えすぎかなと思い、彼は笑い飛ばしました。
しかし、その瞬間、薄い霧が立ち込め、サトルの目の前に何かが現れました。
まるで人の形をした影のようです。

影は静かに動き、サトルの足元へと近づきます。
その姿が明らかになると、その影は不気味な笑みを浮かべていました。
恐怖に駆られたサトルは、声を上げて逃げ出そうとしたとき、その影が彼の後ろに現れました。
恐怖心で逃げるものの、その影はいつの間にかサトルの体を包み込み、彼の足元に跡を残しました。

仲間たちがこの異変に気づき、サトルに声をかけますが、彼は無言のまま。
逃げようとしたサトルの後ろには、彼の体が残す湿った足跡が刻まれていきます。
友人たちは恐れおののきながらも、サトルを助けようと必死でその場を離れようとしました。

ところが、サトルの足元の跡はどんどん広がり、周囲の地面に広がっていきます。
まるで彼がその場から完全に消えてしまうかのように。
サトルは影に飲み込まれてしまったのか?それとも、何かに引き寄せられているのか、彼自身も理解できずにいました。

友人たちは絶望し、急いで神社から逃げることを決意しました。
しかし、出口に向かうと、まるで先回りをされるかのように、彼らの足元には新たな跡ができていました。
それは、サトルが消えた場所へと続いているものでした。
彼らは恐怖と混乱の中で、逃げ出すために必死でしたが、その跡はどこまでも続きました。
そして、彼らは「サトルの元へと誘おうとする存在」を感じることになりました。

神社を離れることに成功したとき、仲間たちは振り返り、まだ神社にいるサトルに思いを寄せました。
しかしその後、サトルの姿を見かけることはなかったのです。
どこに行ったのか、彼の魂は今もその場所に残ったのか、そして、その影は一体誰なのか、誰もわからないままでした。

やがて神社の噂は広まり、肝試しをする者は減りましたが、時折神社の境内で目撃されたという影の跡は、サトルの存在を知らせるものでありました。
人々はもう決して夜見神社に近づくことはありませんでした。

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