ある町の外れ、廃屋が一軒ぽつんと佇んでいた。
その家は昔、家族と犬が幸せに暮らしていたが、ある日、突然の失踪事件に見舞われ、以来誰も住むことのない家となった。
町の人々はその家を「消えた家」と呼び、近寄ることを避けていた。
高校生の加藤健太は、友人たちと共にこの廃屋の真相を探ることにした。
健太は「仲間と冒険」と題した計画を立て、心躍らせながらその家の前へ向かった。
友人の佐藤祐介と田中美咲も参加することになり、三人は意気揚々と中へ踏み込んだ。
家の中は薄暗く、長い年月の影響で壁にはカビが生え、床は腐りかけていた。
しかし、健太たちにはそれが刺激的だった。
「この家には何かがあるに違いない」と健太は言い、仲間たちを鼓舞した。
彼らはしばらく探索を続け、冷たい風が吹き抜ける中、目を引く物を見つけた。
それは、一枚の古びた写真だった。
写真には、家族と犬が一緒に写っていた。
幸せそうな笑顔が印象的で、まるでその瞬間が永遠に続くかのようだった。
しかし、健太はその中に違和感を感じた。
写真の中の犬、その目が何かを訴えているように思えた。
不気味さを覚えつつも、彼らは話を続けた。
「この家の家族は、どこに消えたんだろうね?」と、美咲が言った。
想像するに、家族は何かに怯えていたのかもしれない。
この発言がきっかけとなり、仲間たちの中に変な雰囲気が漂い始めた。
その時、ふと廃屋がきしむ音が聞こえた。
瞬間、何かが彼らの背後で動いたような気配を感じた。
三人の視線が一斉に振り向くと、そこには犬の姿があった。
しかし、その犬は生きているようには見えず、まるで影のように薄らいでいた。
その犬は健太の目をじっと見つめ、次第に彼の方へ近づいてきた。
「これって…本当に犬?」健太は疑問を抱いたが、彼は動けなかった。
影の犬は近づいてくると、何かを訴えるように吠えた。
その瞬間、健太の中に強い衝撃が走った。
「この犬は、何を私たちに伝えたいのだろう?」と彼は思った。
仲間たちもその光景に驚き、どうすることもできなかった。
影の犬が発する声は次第に、強い悲しみを伴って響き渡った。
彼らは恐怖を感じ、背筋が凍った。
美咲が「ここから出よう」と叫んだが、その瞬間、部屋が彼らを引き寄せるかのように動き出した。
健太たちは恐れに駆られ、廃屋から逃げ出そうとしたが、ドアは開かず、体はまるで何かに束縛されたかのように動けなくなった。
影の犬は吠え続け、次第にその姿がぼやけていき、まるで見えない何かに吸い込まれていくように見えた。
「私たちを助けてくれ…」健太はその言葉を口にするが、声は虚しく響くだけだった。
その時、彼の視界に映ったものがあった。
それは、再び現れた家族の姿。
顔は曇っていて、目は虚ろ。
まるで彼らがまだこの家から逃れられずにいるかのようだった。
健太は彼らの表情を見た瞬間、心の奥に恐怖が根付いた。
仲間を思い悩むあまり、彼は自らが何かに飲み込まれそうになっていることに気づいた。
「やめて!出して!」その叫び声が響いた時、影が彼らを包み込み、何もかもが暗闇に包まれた。
気がつくと、健太は一人、廃屋の前に立っていた。
友人たちの姿はすでに消えていた。
彼の心に重くのしかかる真実は、彼が「仲間」と思っていた者たちが、未だに廃屋に閉じ込められていることだった。
消えた家は、彼らを待っているのかもしれない。
もう二度と戻れない場所に。