花は、小さな町にある廃墟を訪れることにした。
この町はかつて賑わいを見せていたが、今では人々の記憶から消えつつある場所だった。
彼女は、かつての栄光を探し求めて、古びた建物の中を探索することにした。
廃墟の扉を開けると、かすかな風が吹き抜け、冷たい空気が彼女の肌を撫でた。
周囲には朽ち果てた家具や、色あせたポスターが散らばっていた。
花は、その光景に胸を打たれながら、一歩一歩慎重に進んでいく。
その時、ふと何かの気配を感じた。
彼女は足を止め、周囲を見回した。
かすかな音が耳に入る。
何かが裂けるような音だった。
怪訝に思いながらも、今ではほとんど忘れ去られた町の記憶を辿るため、花は音の方へ向かうことにした。
心の奥に芽生える不安を振り払うように、彼女は彼女自身の決意を胸に抱いた。
進むにつれ、音はますます強くなり、彼女の心臓は高鳴った。
やがて、花は一つの部屋の前にたどり着く。
扉は開いており、中には人影があるのが見えた。
恐る恐る中を覗くと、そこには一人の女性が立っていた。
彼女の髪は長いものの乱れたままで、顔は影に隠れていたが、どこか異様な雰囲気を漂わせていた。
「誰…?」花は声をかける。
女性はゆっくりと顔を上げ、その目に不気味な輝きを宿していた。
「私の名前は絵里。ここに閉じ込められているの」と女性は静かに告げた。
花は恐怖を感じながらも、その言葉に引き込まれるような感覚を覚えた。
「閉じ込められている?どうして?」花は問い返した。
絵里は微笑みながら言葉を続ける。
「この廃墟には、私を押し込めた何かがいる。そしてその何かが、今も私の中に潜んでいる。」
彼女の言葉が終わると、周囲の空気が変わり始めた。
花はその場の重苦しい雰囲気に圧倒され、後ずさりしたい衝動に駆られた。
しかし、その時、絵里の口元が裂けるように広がった。
「助けて…私を助けて。この場所から逃れさせて…」彼女の声は感情の波に満ちていたが、その瞬間、花の心に何かが引っかかる感覚が走った。
絵里はただ助けを求めているのか、それとも別の何かに操られているのか。
迷った花は、すぐに頭を振った。
彼女にはこの場所から逃げる必要がある。
振り返ると、ドアがどうしても彼女を引き留めているような感覚を覚えた。
廃墟の壁は悲鳴を上げ、未だ逃げられぬ者たちの記憶が結びついているかのようだった。
「どうすればあなたを助けられるの?」恐怖が増す中、花は必死に尋ねた。
すると絵里は目を細めて微笑みながら、指を自らの胸に当てた。
「私の心の中に侵入して、闇を継いでみて。そうすれば私は解放され、あなたはこの場所から出られる。」
その言葉は、花にとって決して軽いものではなかった。
しかし、絵里の目にはどこか純粋な希望が宿っていたように見え、彼女の心のどこかに共鳴した。
ひとたび心の壁を裂くことができれば、彼女たちの運命が変わるかもしれない。
花は意を決して絵里の方へ進んでいった。
二人の間に流れる不気味な空気は、彼女の心をつかんで離さない。
それでも、継いで行く道筋に彼女の決意が映り込む。
心の奥底にある恐怖と向き合わせながら、花は絵里に手をかざし、彼女の内なる闇を受け入れようとした。
どこかで裂けていく感覚が彼女を包み込み、同時に心が解き放たれる音が響いた。
廃墟の air が急に静まり返り、二人の重なり合った心が結びつく。
破壊の先にある新たな道を、彼女たちは一緒に切り開いた。
在ることも無いこともないこの空間の中で、それが彼女たちの今後の永遠を形作るのだった。