「幽霊の待つ神社」

清水は、ある静かな夜に計画していた通り、近くの山にある神社へ向かうことに決めた。
最近、友人たちから聞いた不思議な噂が心の中にずっと引っかかっていたからだ。
山の神社には、急に顔が見えなくなる幽霊が出るという。
皆が気味悪がっているのに、清水はその真偽を確かめるため、単身で出かけることにした。

神社に着くと、周囲は薄暗く、月の光が木々の間からこぼれていた。
ここは、昔から不気味な伝説が語り継がれている場所。
しかし、清水はその伝説を信じていなかった。
神社の境内に進むと、寒さが体を締め付けるように感じた。
不安な気持ちを抱えながらも、一歩一歩進むと、ふと清水は目の前に立つ石の鳥居に目を奪われた。

その瞬間、異変が起こった。
急に静寂が破られ、風が吹き荒れたのだ。
耳をつんざくような音が響き渡り、清水は背筋を凍らせた。
何が起きているのかわからないまま、清水は神社の中に入っていった。
すると、彼の目の前に、白い衣をまとった女の影が現れた。
彼女の顔は薄暗くてはっきりとは見えなかったが、彼女は静かに清水に近づいてきた。

「あなたは誰?」思わず声を出すと、彼女は微笑みながら静かに答えた。
「私は、ここで待っているの…」

彼女の声は柔らかかったが、どこか無機質に響いた。
清水は、胸が高鳴るのを感じながらも、恐怖心を抱くことができなかった。
「どうしてここで待っているの?」

「私の名前は美咲。ずっと、この神社を守っているの。あなたも気づいたでしょう?ここには、不気味な力が宿っていることを。」

清水は驚き、思わず目を凝らした。
彼女の言葉が真実であるか、確かめたくなった。
しかし、美咲の表情が急に険しくなり、清水は心の中に不安がよぎる。
彼女は続けた。
「この神社には、浸透した怨念がある。あなたがここにいる理由は、私を呼んだ者たちと同じ。」

清水は否定した。
「私は呼んでいない!ただの噂を確かめたかっただけだ!」

美咲は静かに笑う。
「そう、あなたがはっきりと否定することで、私の存在は強くなるの。そして、私の力と同化することで、あなたはここで永遠に骨を埋めることになる…」

急に空気が重く感じられ、清水は恐怖で身動きできなくなった。
彼は何をしてしまったのかと後悔し始めた。
美咲はもう一度微笑み、彼の手を取った。
その瞬間、彼は視界が歪み、意識が暗闇に引き込まれていくように感じた。

「おいで、もう恐れなくていい。私たちは、ずっと一緒にいるのだから。」

急に現実に引き戻された清水は、神社から逃げ出そうとした。
しかし、全身が重く、動けなくなる。
何かが彼を捕らえたかのようだった。
情けなく倒れこむと、美咲の声が耳元に響いた。
「あなたも私のようになるのよ…」

気がつくと清水は、静まり返った神社の一隅に横たわっていた。
周囲には不気味な静寂が漂い、彼の存在はもはやこの世のものではなかった。
風が吹き抜け、神社の中に清水の名を呼ぶ声が響いた。

「清水…永遠にここで待っているのよ…」

彼はどこに行ってしまったのだろうか。
もはや答えを持つ者はいない。
ただ、清水の名を呼ぶ無数の声だけが、神社の闇に消えていく。

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