「封印された霊の呼び声」

たっぷりとした緑に囲まれた小さな村、村人たちが代々受け継いできた神聖な場所があった。
村のはずれにある古びた神社。
その神社には、森の奥深くに住む「霊」が封じられていると語り継がれていた。
霊が目覚めると、恐ろしい災厄が訪れるという。

主人公の航(こう)は、大学生になりたての若者で、都心からこの村に引っ越してきたばかりだった。
彼は昔から冒険心が強く、友人たちの誘いを受けてその神社に足を運ぶことに決めた。
興味津々で、村で語られる伝説を肌で感じたかったのだ。

月明かりが神社を照らし出すなか、航は友人たちと共に神社の境内に立っていた。
神社の周囲は静まり返り、風の音すら聞こえない。
航は喧騒から離れ、不気味ながらもワクワクする気持ちを抑えられなかった。
友人たちが冗談を言い合い、勇気を振り絞って神社の中へ入った。
太い木の扉が開くと、辺りが急に静まりかえった。

神社の中に入ると、薄暗い灯りに照らされた祭壇が目の前に現れた。
その祭壇には古いお守りや神具が並べられ、ひときわ不気味な雰囲気を醸し出していた。
航は何気なく手を伸ばし、古いお守りを触ってみた。
すると、急に影が一瞬、祭壇の後ろにさっと通り過ぎた気配がした。
彼は心臓がドキリとするのを感じた。

「何かいるんじゃねぇ?」と友人の一人が言ったが、航は冗談だと思った。
だが、仲間が何かに怯え、神社の外に逃げ出す様子を見て、彼も不安を抱くように。

その時、突然、神社の扉がバタンと閉まり、外の光が消えた。
怖れを抱いた友人たちは悲鳴を上げ、パニック状態になった。
航は一体何が起こったのか理解できなかったが、彼は冷静さを保とうとした。

「落ち着け、呼びかけてみるぞ!」彼は声を張り上げ、周りの友人たちを安心させようとした。
しかし、神社の中で彼らは徐々に暗闇に飲み込まれ、まるで時間が止まったかのように感じた。
恐怖に包まれた彼は心の中で何かが起きているのを感じていた。

彼が祭壇の前に立ち尽くしていると、「ち」っとした声が聞こえてきた。
何かが呼んでいる。
振り返ると真っ暗な境界の向こうに、線香が揺れる灯りが見えた。

「償(つぐな)え、私を忘れずに」と、低い声が響く。
恐怖に駆られた航はその反響の元を探そうとしたが、喉が渇くように息が詰まった。
それは、霊が彼を呼んでいるのかもしれない。
彼は小さな頃に祖母から聞いた怪談を思い出した。
彼女は、亡霊たちが自分の名を知って欲しくて呼んでいると語った。

振り返り、祭壇の前で静かに両手を合わせると、胸の内から何かがこみ上げてきた。
「私は、航です…。あなたのことを忘れていません」。
その言葉を口にすると、暗闇の中から一筋の光が差し込み、霊が姿を現した。

その瞬間、航はかつて彼が訪れたこの村の歴史を思い出し、村人たちがこの場所を大事にしている理由を知った。
彼は一刻も早く村の人々に再びこの霊の存在を題材にして語り、償うべきことを伝えて、村が抱えている恐れと向き合わせていこうと決心した。

仲間たちは次第に落ち着きを取り戻し、航が語った霊のことに耳を傾け始めた。
その瞬間、神社の扉が再び開いたのだ。
彼らは恐れることなく、霊の呼びかけに応え、この村の伝統を守る責任を果たすことにしたのであった。

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