「封印された試みの影」

古い村の一角に、長い間忘れ去られた神社があった。
その神社には、古の巫女が祭りに奉られており、村人たちは「試しの巫」と呼んで敬っていた。
彼女の言い伝えによれば、神社には「封印された力」が宿っているとされ、その力を試した者には大きな影響を及ぼすという。
だが、その力はただの好奇心では簡単に引き出せないものであり、多くの者が挑むも、結果として命を落とすこともあった。

ある夏の夜、若者たちの間で巫女の力を試してみたいという噂が立った。
その中にいたのは、普段から真面目で冷静な青年、健太である。
彼は好奇心と共に、「試み」の果てにある力が何かを知りたくなった。
仲間を募り、彼らは神社へと向かうことにした。

神社の中は静まり返り、月の光が薄暗い境内を照らしていた。
彼らは、放ったらかされている祭壇と見える石を囲み、初めての挑戦を前にした。
「この石の上に手を置く。試しの巫の力がくる時、この石が反応するんだ」と健太が言った。

仲間たちは恐れと期待の入り混じった表情で、彼の言葉に従った。
運命を共にする仲間として、彼らは自らの手を石に置き、力の試みを始めた。
しかし、神社の空気は一瞬変わり、膨大なエネルギーが同時に彼らの周囲を包み込むと、周囲の木々が揺れ始めた。
それはまるで神社から何かが解き放たれようとしているかのようであった。

突然、石の上に置いていた手が熱くなり、視界がぐらりと揺れた。
健太は目の前に現れた亡霊のような存在に驚き、仲間たちの恐怖の表情を見つめながら思わず手を引っ込めた。
そこに立っていたのは、朦朧とした姿の巫女であり、彼女は試される者の前に立ちふさがっていた。

「試される者よ、あなたたちは何を求めてこの場所に来たのか」と巫女は静かに問うた。
その声は冷たく響き、彼らの心の奥底へと響きわたった。
健太は恐怖から目を逸らし、仲間の一人が口を開いた。
「私たちは、巫の力を試し、知りたいだけです!」

その言葉を受け、巫女はじっと彼を見つめた。
「知るべきものと知らざるもの、どちらを選ぶ?力には代償が伴う。その名は、亡者たちの封に他ならない。」彼らは一瞬、意味を理解できなかったが、巫女の目が真剣であることを感じ取った。
亡者とは、昔この場所で試みを行い、失った者たちのことなのだと。

健太は言葉を失い、仲間たちの恐怖を感じた。
彼らは無邪気な好奇心から来たはずが、その言葉の深刻さに気付いてしまった。
しかし、誰もが後戻りできなくなっていた。

「どうか教えてください」と健太は身を乗り出し、思わずミが震える言葉で訴えた。
すると、巫女は他の者たちにも問いかけた。
「自らの命を重んじるか、それともこの力の恩恵を求めるか、選びなさい。」仲間は瞬時に恐怖に震え、次々に逃げ出した。
しかし、健太だけがその場に留まっていた。

「私は試したい。何であれ、私が受け入れるから」と彼は言った。
巫女は微笑み、その手を差し伸べた。
「封印された力と共に、あなたの心の試練が始まる。今この瞬間、あなたは私と共に裁かれる運命にある。」

次の瞬間、健太の周囲は黒い霧に包まれ、未知の世界へ引き込まれていった。
彼の視界が真っ暗になり、自らの意識が消えていく感覚に襲われた。
巫女の姿は薄れていき、彼の心に「試される」感覚だけが残った。

翌朝、村人たちは神社の周囲で健太の姿を探していたが、彼の存在はどこにもなかった。
試みの代償は、彼の命を封印された力へと引き渡してしまった。
その神社は再び静かに、そして孤独に時が流れ、試みの亡者たちを待ち続けていると言われている。

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