静かな村の外れに立つ「う」神社は、長い間村人たちに敬われてきた。
しかし、その神社には「リ」という名前の巫女がいて、彼女は村の安寧を守るために神の意志を伝えていた。
リは優しく、村の誰からも愛されていたが、彼女には一つの秘密があった。
それは、彼女が神社に封じ込められた忌まわしい「敵」との繋がりだった。
ある日、村に厄災が訪れた。
天候は荒れ果て、畑は枯れ、動物たちも次々と姿を消していった。
村人たちは怯え、神社に詣でることが日常へと変わった。
しかし、リはその様子を見て、心の奥に潜む不安が膨らんでいくのを感じていた。
「このままでは、村が滅びてしまう」とリは思った。
彼女は自分が神の使いであることを信じ、毎晩神社で祈りを捧げ続けた。
しかし、祈るたびに聴こえる声が変わっていく。
「リ、私を解放せよ…」その声は、かつて神社に封じ込められた敵のものであり、彼女の心に恐怖を植え付けていった。
リは悩む。
敵を解き放てば、村がどうなるか。
しかし、解放しなければ、このまま何も変わらない。
日が経つにつれ、村の苦しみは深まっていく。
そんなある晩、リは夢の中で神に呼ばれた。
「リよ、お前がこの村の運命を背負う者であるなら、選択をせよ」と。
目が覚めたリは、心の中で決意した。
敵を解放し、真実を知ることが全ての答えに繋がるはずだ。
リは神社へ向かい、封印された場所にたどり着いた。
「あなたを解き放ちます」とつぶやくと、彼女はその場所に手をかざした。
瞬間、周囲が真っ暗になり、冷たい風が吹き荒れた。
目の前に現れたのは、何もかも腐り果てたような影のようなもので、濁った目をなにかが見つめていた。
「リ、私を解放したのだな」と、その声は響く。
彼女は背筋が凍るような恐怖を感じるが、立ち向かうしかなかった。
「あなたは何者ですか?なぜ、この村に災厄をもたらすのですか?」
影は微笑む。
「私はかつてこの村を支配していた者。神に封じられ、忘れ去られた存在だ。お前が私を解き放ったことは、運命の変わり目だ。私と共に生きれば、村は豊かになるが、従わなければお前もこの村も滅びるだろう」
リはその言葉に心が揺れ動く。
しかし、彼女の中には決して譲れない信念があった。
「私は村を守ります。たとえあなたが敵だとしても、私はこの村のために戦う」
影は笑った。
「愚か者よ。私の力を知ったら、すぐに後悔することになるだろう」
それから、村はまるで呪われたかのように悪化していった。
村人たちはリを恐れ、非難の声を上げ、彼女に背を向けた。
リは孤独の中、ひたすら祈り続ける。
しかし、彼女の願いは虚しく、敵の影はますます力を増していく。
ある晩、村人たちはリに攻め寄った。
「もはやお前には用はない。村を救うために、敵を捨てろ!」リはただ静かに答えた。
「私は、村を守るために戦います」
その時、神社の社務所から光が差し込み、リは神に守られた感覚を覚えた。
影が手を伸ばしてきたが、光に吸い込まれるように消えていった。
村人たちは困惑し、まるで夢を見たかのように何もかも忘れてしまった。
リは神社で祈り続け、村は次第に回復を見せる。
彼女は運命を背負う巫女として、村の守り手になった。
だが、影の声が遠くから囁く。
「お前はまだ完全には勝っていない」と。
リはその声を胸に抱えながら、さらなる戦いに備えつつ、村のための祈りを捧げ続けた。