間(あい)の住む小さな村は、長い歴史を持つ古い集落であった。
この村には古い神社があり、村人たちは日々の生活の合間に神社参りを欠かさなかった。
しかし、近年、村人たちの間に「扉」の存在が囁かれるようになった。
その扉とは、神社の裏手に位置する古びた小屋の扉だった。
誰もがその存在を知りながらも、近づこうとする者はいなかった。
古くからの言い伝えによれば、その扉の向こうには悪霊が封じ込められていると言われ、村の人々は決して開けてはいけないと教え込まれていた。
ある晩、間は夜遅くまで村の祭りの準備を手伝っていた。
提灯の灯りが村を優しく包み込んでいたが、その温かさも、次第に不気味な静けさに変わっていった。
周囲が静まり返る中、間は記憶の彼方にあった扉のことを思い出した。
気になった彼女は、一瞬の好奇心に駆られ、小屋の方へ向かうことにした。
小屋にたどり着くと、月明かりが薄暗い扉の上に静かに降り注いでいた。
扉は古びていて、長い間開かれたことがないことを示すように、埃が積もっていた。
しかし間は、その扉を開けてみたくてたまらなかった。
「どうしても、一度だけ中を見てみたい…」そんな思いが彼女の心を支配した。
意を決して、間は扉に手をかけた。
ギーという音を立てて扉が開くと、そこには意外にも真新しい部屋が広がっていた。
薄明かりに照らされたその部屋には、不気味な雰囲気が漂っていたが、間は一歩踏み込むことにした。
部屋の中央には、古い木製のテーブルがあり、何かが置かれている。
近づいてみると、それは小さな箱だった。
好奇心旺盛な間は、恐れも忘れてその箱を手に取った。
すると、その瞬間、扉がバンと閉まり、暗闇が彼女を包み込んだ。
「誰か…助けて…!」間は叫んだが、声は闇に飲まれていく。
箱を開けると、中から不気味な声が響き渡った。
「私を呼んだのか?この村には私を忘れ去ることが許されない…」
それは過去の村人たちの声であり、彼らは間に何かを訴えかけているようだった。
「私たちを思い出して、再び祭りを続けてほしい…」その言葉が耳に残り、間は恐怖に駆られた。
彼女は必死に扉を開こうとしたが、閉ざされた扉はびくともせず、彼女の絶望が募っていく。
しかし、その時、彼女の心の中に思い出がよみがえった。
幾度となく祭りで聞いた先代たちの言葉、村の伝説、そして、何よりも大切にしてきた村の歴史。
彼らの声が耳元でささやくように聞こえる。
「思い出して、私たちの祭りを忘れないで…」
間は心の中で誓った。
「私が、この村の伝統と記憶を守る!」彼女の思いが通じたのか、突然、扉がゆっくりと開き始めた。
そして、彼女のアルバムに残る祭りの映像が次々に浮かび上がり、村人たちの姿が彼女の前に現れた。
「あなたが私たちを救ってくれたんだ…!」村人たちの感謝の言葉が響き、間は涙を流した。
彼女はそのまま村へ戻り、村の人々にその出来事を話すことにした。
そして、間はこの出来事をきっかけに、村の伝統を再び蘇らせることに尽力した。
祭りは再び賑わいを取り戻し、村人たちは彼女の勇気を称賛した。
村の人たちが記憶を新たにしたことで、かつての悪霊は再び封じ込められ、扉も静かにしまわれた。
間は、村人たちと共に伝統と記憶を守り続けることを誓い、夜空の下で再び祭りの笛の音が響き渡ることになるのだった。