昔、山奥にひっそりと建てられた一軒の古い民宿がありました。
その宿は「秘」と名付けられ、地元の人々の間では禁忌の場所として知られていました。
人々はあそこに近づくことを避け、その理由を口にすることすら避けていました。
しかし、好奇心が強い若者たちの中には、その隠された恐怖を確かめようと、宿に向かう者もいたのです。
ある夏の夜、友人たちと共に宿を訪れた一人の青年がいました。
彼の名は誠。
彼は、宿に宿泊することで、そこに隠された「跡」を見つけ出そうと決意していました。
宿の外見は古びており、暗い森に囲まれてひっそりと立っていました。
廃墟のような雰囲気が、誠の心をざわつかせますが、彼はそのまま中に入ることにしました。
宿の中は、埃が積もった家具や薄暗い廊下が続き、何か異様な空気が漂っていました。
宿の奥に進むと、彼は一室の扉が少しだけ開いているのを見つけます。
興味をそそられた彼は、恐る恐る扉を押し開けました。
そこには、古びた鏡が置かれた部屋が広がっていました。
その鏡は、ただの装飾品ではなく、彼はそこに何か異常なものを感じました。
彼が鏡に目を凝らすと、自分自身の姿が映し出されると同時に、背後に黒い影が映り込むことに気づきました。
その影はまるで、自身の後ろに何かがいるかのよう。
彼は振り向きましたが、そこには誰もいません。
再び鏡に目を戻すと、影は一層はっきりと映し出されていました。
彼は恐怖を抱きながら、その部屋を出ようとしましたが、扉が閉まってしまいました。
焦りを感じながら、誠は扉を叩きました。
その時、影が彼に近づいてくるのを感じます。
影は徐々に実体を持ち、彼の周りを取り囲むように忍び寄ります。
「解かれた時、命を返せ」と、周囲がささやく声が響きます。
誠はその言葉が何を意味するのか分かりませんでしたが、自分の心臓が高鳴り始めるのを感じました。
その夜、誠は何度も断片的な夢に悩まされました。
夢の中では、自身が宿に閉じ込められ、他の若者たちが次々と姿を消していく様子が映し出されました。
彼らは「敗」の色を示しながら、人生の終焉を迎えつつありました。
夢から覚めるたびに、彼は冷汗をかいていました。
そして、片隅にあった古い日記が不意に目に入りました。
その内容を読み進めるうちに、宿に隠された真実へと迫っていくことになります。
その日記には、かつてこの宿に宿泊した人々の逸話が記されており、ある青年が宿の「跡」を解こうとした結果、命を落としたということが書かれていました。
彼の衝撃的な運命が、誠の心に重くのしかかります。
日記の内容に触れ、誠は宿から逃れるためには、「跡」を解き明かすしかないことに気づきます。
彼は再び鏡の前に立ち、影と向き合うことにしました。
「あなたの求めているものは何ですか？」と問いかけます。
返事はなく、ただ影の姿がゆらゆらと揺れています。
しかし、その姿にはどこか悲しげなものを感じました。
「私たちを解放して…」と、小さな声が響くのを聞いた瞬間、彼の心に決意が芽生えました。
誠は自分の運命を握りしめ、影を解き放つための儀式を始めました。
そして影を解くことで、彼はこの宿から逃げ出す方法を見つけられるのか、すべてはその先にあるのです。
暗い夜が明け、彼はついに宿の扉を開けました。
そこには朝日が差し込み、彼を待っていたように感じました。
しかし、影はまだ彼のそばに残り、彼が解いた約束を果たすために、どこかで静かに息をひそめているのかもしれません。
