望の郊外、静まり返った夜、ひとつの小さな村があった。
村の端には、伝説的な巫女が住んでいると言われる神社があり、そこには代々受け継がれてきた神秘的な力が宿っていた。
しかし、その力には代償が伴うと噂されていた。
村人たちは恐れを抱きながらも、その伝説に耳を傾けていた。
村には、健と美香という若いカップルが住んでいた。
二人は高校時代の友人で、卒業を控えた春の日、美香は「巫女の力に触れてみたい」と興味を示した。
彼女の好奇心は止まらず、健は渋々同意するしかなかった。
二人は、月明かりに照らされた神社へ向かうことにした。
神社は苔むした石の鳥居が立ち、そこに至る道は朽ちた木々に囲まれていた。
二人が近づくと、冷たい風が吹き抜け、不穏な気配を感じた。
健は不安を抱えながらも、美香の手を引いて境内まで進んだ。
祭壇の前には、巫女が立っていた。
彼女は若いが、その瞳はどこか深い知恵を持っているように見えた。
「あなたたち、何を求めてここに来たの?」巫女は静かに問いかけた。
美香は目を輝かせながら、「この力を試してみたくて!」と元気に応えた。
健は心配でいっぱいだったが、美香の夢を壊したくなくて何も言えなかった。
巫女は笑みを浮かべながら、彼女に神社の封印された秘密を明かした。
「この神社の力は、時には求める者に試練を与える。それは、覚悟を試す儀式だ」と言い、美香に手を差し出した。
美香は迷わずその手を取ったが、健は彼女を引き止めようとする。
「ちょっと待ってくれ、美香!やめよう!」健の声は緊迫した雰囲気を漂わせたが、美香は巫女の手を握りしめた。
すると、神社の雰囲気が一変した。
周囲が暗くなり、彼女の意識がぼんやりと霞んでいく。
夢の中にいるような感覚が広がり、彼女はまるで自分が神社要素の中でフワフワと漂っているかのようだった。
その瞬間、美香の記憶が呼び起こされ、彼女の心の奥に封じ込めていた過去の出来事が浮かび上がってきた。
彼女は小さな頃、友だちのために犠牲になったことがある。
それからずっと感じていた罪の意識が、今になってあふれ出たのだ。
「あなたは、自分自身を許せていない。」巫女の声が反響した。
「その罪を償うためには、自らの選択で贖わなければならない。」
美香は苦しみながらも、自分の心の中で何かを解放した。
その瞬間、彼女は周囲の空間が変わっていくのを感じた。
過去の記憶が次々と流れ、彼女は小さな頃の仲間たちの顔を思い出した。
その顔には、彼女への期待と愛情が宿っていた。
健は美香の手を握り込んだ。
「行かないで!」彼は心の底から叫んだ。
しかし、美香はその影響を感じながら、笑顔で彼を見つめ返した。
「私、行くね。これが必要なの…」彼女は覚悟を決めた。
巫女は微笑み、彼女に自分の力を託けたようだった。
その後、美香は遺された記憶から逃れることなく、過去の友人たちとの思い出を胸に、次の世界へと旅立っていった。
健は彼女の背中を見送りながら、涙を流した。
彼は何もできなかった自分を恨み、ただその場に立ち尽くしているしかなかった。
神社は静まり返り、健が帰る途中、振り返ると巫女は微笑んでいた。
そして、彼女の顔は美香のものに変わっていた。
健はその瞬間、自分の目の前にいる巫女が美香であることを悟った。
彼女は覚悟をもって過去を受け入れ、今もこの場所に生き続けているのだと感じた。
彼女の笑顔は、彼に未来を光り輝かせる意味を教えてくれた。
今後、彼は美香の意志を背負って生きることを決意した。