「失われた遊び場の謎」

公はある小さな町に住む、平凡な大学生だった。
彼は人混みを避けるように、いつも一人で過ごすことを好んでいた。
周囲の人々との交流は少なく、落ち着いた日々が続いていた。
しかし、そんな彼の生活はある出来事によって変わることになる。

ある晩、彼は学校の課題に追われていたため、いつもより遅くまで図書館に残っていた。
外はすっかり暗くなり、館内もひっそりと静まり返っていた。
そんな時、彼は偶然、古びた本の中に挟まれていた手紙を見つけた。
手紙はボロボロになっていて、ほとんど文字が擦り切れていたが、一部に「線を越えてはいけない」という不気味な言葉が読めた。
公はその言葉に興味を持ち、ページをめくっていくと、さまざまな奇怪な現象が記されたノートを発見した。
この話の中には、失ったものを求める魂が線を越えて現れるという恐ろしい話が含まれていた。

興味を持った公は、その晩、手紙と一緒に帰宅した。
彼の心には、失うことへの恐れとその裏返しの好奇心が渦巻いていた。
彼は、手紙に書かれた「線」を探しに行くことを決意する。

次の日、公は町を歩きながら不気味な感覚に捕らわれた。
彼は、どこかの場所が既にその「線」を超えたような感覚を覚えた。
公はいつも歩く道ではなく、人気のない細い路地へと足を進めた。
そこには、かつて公が幼いころに遊んだ公園があった。
この公園は、今やすっかり荒れ果てており、草は生い茂り、遊具は朽ち果てていた。

彼は、そこで何かを感じた。
心の中に埋もれていた幼い日の思い出と共に、失った何かが呼びかけているように思えた。
公はその瞬間、自分が失ってしまった友人たちとの時間を求めていることに気づいた。
幼いころの無邪気な笑い声や、幾度も共に遊んだ楽しい記憶。
それらを取り戻したいとの思いが強くなり、公は線を越える決意を固めた。

その夜、公は再び公園に向かった。
やがて公園に近づくと、彼は不思議な気配を感じた。
周囲の空気が変化し、暗がりの中からかすかな声が聞こえてきた。
まるで失った友たちが戻ってきたかのように。
彼は身を乗り出し、その声の方へ向かおうとした。
その時、突然、目の前に白い線が現れた。
まるでそれが禁忌であるかのように、彼は一瞬立ち尽くした。
しかし、彼の心の中で友たちの笑い声が響き渡り、線を越えないわけにはいかないと感じた。

公は逃げるようにその線を越えると、たちまち視界が暗転した。
彼が目を開けた時、そこにはかつての遊び場の景色が広がっていた。
友人たちと笑い合っていた日々が復活し、公は心躍らせた。
しかし、すぐに異変に気づいた。
友人たちがこちらを見ている、その表情がどこか冷たく、無表情だった。
そして、彼らの背後には、かつての公園の記憶すら失った、不気味な闇が広がっていた。

恐れを感じた公は、彼らから逃げようとしたが、振り返ると彼らの姿は次第に消えていく。
その光景に、公は強い失望感を覚えた。
友人たちは、彼が求めたものではなく、もう戻らない何かだった。
失ったものを追い求めることが、彼をこの歪んだ世界に引き込んでしまったのだ。

公は、友人たちの笑い声を失ったことを痛感し、二度と戻れない世界に入ってしまったことを理解した。
彼はその瞬間、もう一度線を越える必要があると感じた。
しかし、目の前には再びあの白い線が現れ、彼を阻んでいるかのように見えた。

それ以来、公は町に戻ることができなかった。
彼の姿は目撃されたが、彼の心はあの遊び場に縛られ、友人たちを求め続けることになった。
そして、公が求めて失ったものは、もう二度と戻ることのない奇跡のような記憶となった。

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