秋の深まったある晩、創は友人と共に肝試しを計画した。
都会の喧騒から離れた静かな森の中に、かつての村の址があるという噂を聞いたのだ。
その村は数十年前、突然の土砂崩れで壊滅し、今では草木に覆われた廃墟と化している。
友人たちと共にその場所を訪れるのは、彼にとって好奇心をくすぐる冒険だった。
創と彼の友人、健太、芳香、恵美の4人は、夜の闇が訪れると同時に、深い森の中へと足を踏み入れた。
懐中電灯の光が薄暗い道を照らし、時折、枯葉の音が響く。
彼らは笑い声を交わしながら、かつての村の跡地を目指して進んだ。
この時、誰も、その先に待ち受ける恐怖に気づいていなかった。
村の跡地にたどり着くと、崩れた石の家々が薄明かりの中に浮かび上がり、静寂な空気が漂っていた。
彼らは広場に集まり、かつての村の話を始める。
遺された神社にまつわる怪談が多く語られ、その中には村人たちが失ったものへの思いが込められていた。
創は自分の興味を満たすために、もう一度その神社を訪れることを提案した。
友人たちとともに神社へと向かうと、その入り口には無造作に草が生い茂っていた。
懐中電灯の光が照らす先には、朽ち果てた鳥居があった。
創はその光景に胸が高鳴るのを感じた。
だが、健太は「こんなところ入るの、怖いな」と言った。
芳香と恵美も同様に怯えていたが、創はその一歩を踏み出す決意を固めた。
神社の中に入ると、空気が一変した。
空間はひんやりとし、どこか冷ややかな気配を感じる。
彼らはまるで時間が止まったかのような感覚に包まれ、静まり返る中で、微かに人の気配を感じることができた。
しかし、そこに誰もいなかった。
創は、何か異変を感じながらも、恐怖を押し殺して奥へ進んだ。
すると、彼の目の前に何かが立ちはだかる。
それは影のような存在で、彼の視線を奪った。
驚いた彼は仲間に目を向け、だが彼らの反応は鈍く、まるで何かに気づかないかのようだった。
創の心臓が高鳴り、彼は振り返って逃げ出そうとした。
その瞬間、周囲の景色が歪み、彼の視界が崩れながら暗闇に飲み込まれていった。
「創!?」と友人たちの呼び声が聞こえたのは、ほんの一瞬だった。
彼はその声を背に、暗闇の中を走った。
必死に出口を探しても、どこを向いても同じ場所から出られない。
彼の心に浮かんだのは、失った友人たちの顔。
彼はその思いを胸に、ますます必死になった。
その時、彼は耳元で囁く声を聞いた。
「あなたも仲間になりましょう…」その声が響くと、彼の足元が崩れ、身動きができなくなってしまった。
目の前には再び影が現れ、彼を取り囲むように近づいてきた。
思わず目を閉じた創は、失ってはならない友人たちの笑顔を思い出していた。
目を開けた時、目の前には空っぽの神社の入口が広がっていた。
創は呆然と立ち尽くし、振り返ると彼の仲間たちの姿はどこにもいなかった。
あの影は、彼らを奪ったのか。
創は気づく。
彼らと過ごした大切な時間、そして失われた友情が、今の自分に何を意味するのか。
友人たちの声を再び聞くことはないのかもしれない。
心の奥に深く刻まれた痛みが、これからも彼を苦しめ続けるのだった。