作は長い作業時間を経て、少し疲れ気味だった。
彼は、毎晩同じ夢を見るようになった。
それは、漠然とした闇の中に放り込まれ、天空を飛び回る鳥を見つめるというものだった。
最初は単なる夢だと考えていたが、何度も繰り返されるうちに、それは現実さながらの迫力を帯びていった。
夢の中で、作は自分が空を飛ぶ感覚を味わっていた。
羽ばたく鳥たちは彼を見下ろし、その目には何かメッセージのようなものが宿っているように感じた。
彼は無意識のうちに、その鳥たちの声を聞こうとしていた。
「真実は、闇の中にある…」という囁きが、彼の耳元で響く。
しかし、その言葉は心に重くのしかかり、理解することができないまま、寝覚めることが多くなった。
ある夜、作は再びその夢を見た。
夢の中での彼は、鳥たちに導かれて、赤い月が照らす空へと舞い上がっていた。
だが、今夜は何かが違った。
鳥たちの姿がただの羽ばたきではなく、彼を狙うように感じられた。
闇が彼の周囲を包み込み、彼の心に不安を与えた。
翌朝、作は明らかに疲れを感じた。
彼は夢の中での出来事について考え、頭の中でその意味を探ろうとした。
だが考えれば考えるほど、心に不安感が広がっていった。
そこで彼は、夢の中で見た赤い月と鳥たちの意味を知るために、あらゆる手を尽くすことを決意した。
作は書店で夢占いの本を手に入れ、自分の夢を分析することにした。
ページをめくるごとに、彼は興味深く様々な解釈を読み進めた。
そして、一つの箇所に目がとまった。
「鳥は自由の象徴であり、真実を伝える存在。闇は無知や恐れを示す」とあった。
作は思わず背筋が凍るような感覚を覚えた。
何が彼に警告をしているのか、夢の中での出来事は彼に何を伝えようとしていたのか、徐々に恐怖感が彼を包む。
夜に深まるにつれ、彼は再び夢を見ることを恐れた。
しかし、朝が来ると冷静になり、次の夢で何が起こるのかを感じたくなり、布団に横たわった。
闇がやってきた。
夢の中で、作は再び赤い月の元へ飛び立ち、鳥たちに囲まれる。
彼は彼らの声に耳を傾けた。
「真実は、ここにある…」と囁く彼らの声は、彼の心に刃のように刺さった。
その時、彼は一羽の黒い鳥に導かれ、無限の暗闇へと進んでいった。
彼が到達した先には、一つの大きな鏡があった。
その鏡の奥には、彼自身の姿が映っていたが、そこには恐怖と哀しみが溢れていた。
彼の目に映るのは自分の影、彼が抱えていた無数の秘密や恐れが、鏡の中で形となっていた。
「逃げるな、真実を見ろ」と、黒い鳥が彼に告げる。
しかし、作は自分の心の奥にある恐怖から逃げたくなり、目を逸らそうとした。
しかし、その瞬間、鏡が割れ、闇から数百羽の鳥が彼の周囲を取り囲んだ。
夢の中で作は逃げることができず、ただ震えていた。
そして、耳を澄ますと、無数の声が彼の中に複雑に入り混ざった。
「真実を知ることは恐れだ」「真実を受け入れることが解放だ」と叫び続けた。
目が覚めた時、作は心の中に植え付けられた問いに対峙することを決意した。
彼は夢に導かれたのだと理解する。
闇の中に潜む真実を知ることで、彼は真の自由を得るために、再び夢の中へと旅立つことを決めた。
彼は空に向かって羽ばたく鳥たちの仲間となり、自身の不安と恐れを乗り越えていくのだった。
彼の物語は、夢と現実の狭間で繰り広げられていく。
