「夢の中の花畑」

穏やかな波音が響く小さな島、桜島。
その島には、古くからの伝説が語り継がれていた。
「島に花が咲く時、亡き者が夢に現れる」との噂だ。
地元の人々は、この言い伝えを恐れながらも、どこか神秘的な気持ちを抱いていた。

ある年の春、若い女性、佐藤花は友人たちと一緒に桜島へ遊びに行くことにした。
彼女は都会から離れた静かな場所で心を癒すことを望んでいた。
島に着くと、咲き誇る花々が彼女たちを迎えた。
色とりどりの花が甘い香りを漂わせ、花はその美しさに心を奪われた。

夕暮れ時、友人たちと浜辺でのんびり過ごしていると、彼女はふと、島の奥から聞こえる低い歌声に気づいた。
気になるその声を追いかけるうちに、彼女は一人きりで離れてしまった。
花は、歌声のする方向に進んでいくと、いつの間にか暗くなり、周囲は異様な静けさに包まれていた。
このままではまずいと思い、戻ろうとしたその時、彼女の目の前に一面の花畑が広がった。

そこに立っていたのは、薄い白いドレスを着た女の子だった。
彼女は微笑み、花によく似た顔を持っていた。
「私の名前は美花。この島で待っていたの」と、彼女は言った。
花は驚き、しかし心の底から温かな感情を抱いた。
「どうしてここに?」と問いかけると、美花は「私の夢の中に、君の助けが必要だ」と言った。

その言葉に花は興味を持ち、美花に近づいた。
「どういうこと?」と尋ねると、美花は静かに目を閉じ、指を空に向けた。
「この島の花が咲く時、亡き者が私の夢を訪れる。けれど、私はその存在と共にいることができない。誰かが助けてくれなければ、私は永遠にこの島に閉じ込められてしまう」。
神秘的な雰囲気に包まれた花は、美花の言葉にどうすることもできず、彼女をただ見つめるしかなかった。

その時、花は心に決めた。
「私はあなたを助ける」

翌日、友人たちは花を探した。
彼女を見つけた時、彼女は異常なほど夢中になっていた。
花は美花との約束を果たすために、島の中心にあるという禁断の森に向かうことにした。
友人たちは止めたが、花は進むことを決意した。
彼女は一人で森に入っていった。

森は暗く、異様な雰囲気に包まれていた。
木々が密集し、視界が遮られ、どこを歩いているのかさえ分からなくなった。
そんな中、花は美花の声を聞いた。
「勇気を出して、進むのよ」と。
彼女はその声に導かれながら、一歩一歩奥へ進んでいく。

突然、目の前に大きな木が現れた。
その木は、見るからに古びていて、長い年月が経ったように見えた。
花はそこに手を触れ、何かを感じ取った。
すると、木が微かに揺れ、周囲の空気が変わった。
彼女は直感で、発動の瞬間が近づいていることを悟った。

次の瞬間、視界がぼやけ、花の周囲が暗くなり、彼女は夢の中に引き込まれた。
意識が飛んだ先、美花が再び現れた。
彼女の周りには美しい花が咲き誇り、そこにはかつて失われた魂たちが集まっていた。
花はその光景に驚き、同時に美花の助けになりたいという思いが強くなった。

「美花、私があなたを助ける!」と叫んだ。
すると、美花は微笑んで頷いた。
「ありがとう、私の友達」。
花は心を込めて手を伸ばし、美花の手に触れた。
その瞬間、まるで周囲がひとつになるかのように感じ、彼女は力を込めた。

目が覚めた時、花は森の中に立っていた。
周りは静かで、不思議な感覚に包まれた。
彼女は心の中で、美花が解放されたことを感じ取った。
そして、この島で花が咲く時、もう二度と亡き者は夢に現れないだろうと信じた。

花は涙を流しながら、ゆっくりと島を後にした。
桜島には今も、美しい花々が咲いている。
だけど、彼女が経験した夢の出来事は、決して忘れられないものとなった。

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