彼女の名前は佐々木瑠美。
20歳の大学生で、夢の中での出来事に悩まされていた。
彼女は毎晩、同じ夢を見ることに気づいた。
それは静かな村に古びた白い家があり、その家の中にいる自分自身。
家の周りには薄い霧が立ち込め、外の風景がぼんやりと見えるだけだった。
瑠美はその家の中で、誰かの声を聞くことができたが、その顔はいつも暗がりに隠れて見えなかった。
この夢は、何度も繰り返され、瑠美の心の奥に奇妙な感情を植え付けていた。
そして、日常生活にも影響を及ぼしてきた。
目覚める度に、彼女は重い気分に包まれ、何か大切なことを忘れているような感覚に苛まれていた。
ある夜、瑠美はいつも通りに夢の中の白い家に入った。
しかし、今日はいつもと違い、声がより近くに感じられた。
身動きが取れないまま耳を澄ませると、かすかなささやきが聞こえてきた。
「真実を知れ…」。
その言葉が彼女の心に刻まれ、彼女の好奇心を引き起こした。
目が覚めると、夢の内容が頭から離れなかった。
瑠美は自分の居場所となる村を探そうと決心した。
家の特徴を心に留め、インターネットで地方の古い村を調べたところ、彼女はあるニュース記事に行き着いた。
その村は「薄霧村」と呼ばれ、奇妙な伝説が語り継がれていた。
村の人々は夢を通じて過去との接触を持ち、時には悲劇が生まれることもあると言われていた。
瑠美は薄霧村を訪れることにした。
現地に着くと、まさに彼女の夢に出てくる家そのものが目の前に広がっていた。
緊張が走る。
彼女は尻込みしながらも、好奇心が勝り、家の中に一歩踏み入れた。
中は夢で見たものとまったく同じだった。
薄暗い廊下を進むと、またも声が響いてきた。
「真実を知れ…」。
その声は瑠美を再び引き寄せた。
彼女は思わず目を閉じ、その声に身を委ねた。
すると、目の前に一人の少女が現れた。
彼女は瑠美とそっくりで、同じ年頃の姿をしていた。
「私はあなた、瑠美。あなたの未練がこの家に留まっているの」と彼女は語り始めた。
瑠美は一瞬、背筋に冷たいものが走った。
少女は、かつてこの家に住んでいた瑠美の過去の姿だった。
彼女はかつて幸せに暮らしていたが、ある事件で村人たちに裏切られ、命を落とした。
その瞬間、すべての記憶が蘇り、瑠美は自分が彼女の再来であるかのように感じた。
「あなたの夢は私の残した思い。真実を知り、私の恨みを晴らしてほしい」と少女は言った。
その言葉が瑠美の心を揺さぶり、彼女は決意する。
村に隠された真実を掴むため、今生きている村人たちに話を聞く必要があった。
瑠美は村を回り、かつてのことを知る老人や村人たちと対話を重ねた。
そして、徐々に明らかになったのは、村には彼女の過去の罪を背負った者たちがいることだった。
彼らは瑠美を裏切り、幸せを奪ったが、罪の意識に苛まれて今もその思いに苦しんでいるらしい。
瑠美はついに真実を知り、かつての自分自身と向き合うことを決意した。
「あなたたちの苦しみを理解した。私もまた、あなたたちと同じように生きたい。しかし、心の清めが必要だ」と心の中で繰り返す。
彼女はその思いを無事に伝え、村の人々と共に赦し合い、過去に向き合う儀式を始めた。
その夜、白い家の中で、瑠美は少女と共に立ち、温かな光に包まれる感覚を覚えた。
彼女たちは互いに手を取り合い、過去を解き放つと同時に、ありがちな夢の終焉を迎えた。
薄霧村の伝説は、瑠美の心の中で新たな意味を与えられ、彼女はこれからの人生を強いて歩むことができると感じた。
瑠美の目の前に広がる風景は、今までと違い、明るく輝いていた。
そして、彼女はこの場所を決して忘れず、次の世代へと語り継いでいくことが、彼女の使命だと心に決めた。