夜の帳が降りる頃、松本はいつも通り、仕事から帰宅し、疲れた体をベッドに横たえた。
彼は仕事のストレスから解放されることを願い、すぐに眠りについた。
夢の中で彼が目を覚ましたのは、見知らぬ部屋だった。
淡い光が部屋の隅から漏れ、かすかに温かな空気が漂っていた。
不思議な安堵感に包まれた松本は、ゆっくりと立ち上がった。
「ここはどこだろう？」彼は自問したが、答えは返ってこない。
部屋の中心には一つの鏡があり、その中には彼の姿が映っていた。
しかし、鏡の中の彼は、どこか異様だった。
難しい表情で、彼を見つめ返していたのだ。
松本はその瞬間、不安を感じ始めた。
心の中で違和感が膨れ上がり、現実の世界に戻りたいという思いが強くなった。
すると、突然、鏡の光が強く激しくなり、松本の視界が一瞬真っ白に染まった。
彼が気がつくと、今度は同じ部屋の別の場所に立っていた。
だが、今回は人影が見えた。
その人物は、彼の親しい友人である岡田だった。
しかし、岡田は無表情で、まるで松本をただ見つめるだけの存在に変わっていた。
「岡田、どうしたんだ？」松本は声をかけたが、友人は何も答えず、彼の目をじっと見つめ続けた。
松本は恐れを感じ、部屋の出口に向かおうとしたが、何かが彼の身体を引き留めているようだった。
心臓が早鐘のように鳴り、動悸が激しくなる。
何かがこの場所から逃がさないようにしている。
彼は岡田を振り返ると、そこには何か異様な影がちらりと見えた。
その瞬間、周囲の光がさらに増し、松本は再び目を白黒させた。
目の前には今まで見たことのない光景が広がっていた。
光の中には無数の人々の顔が浮かび、彼の中で覚えのある声が響いていた。
「助けて、松本…ここから出られない…」
その声はかすかで、まるで遠くから呼んでいるようだった。
彼の心は不安と恐怖で渦巻いていた。
結局、岡田もこの中にいるのか？もしそうなら、彼を助けるにはどうすればいいのだろう。
松本は混乱しながらも、前に進むしかないと思った。
目の前の光の中に、何かの答えが隠されているはずだと信じたのだ。
前に進むにつれ、周囲は次第に明るくなり、視界が次第にはっきりとしてきた。
しかし、光が強まるにつれ、松本は身体がどんどん重くなるのを感じた。
心の中に潜む恐れが彼を締め付け、逃げられない絶望が増していく。
明るさが彼の心を浸食し、あの鏡の中の自分と対峙する瞬間を迎えていた。
「お前もここに留まる運命なんだ」と、彼の耳元にどこからともなく囁く声がした。
松本はその言葉に体が凍りついた。
薄暗い影が彼の背後から迫り、圧迫感が増してきた。
過去の後悔や恐れが心を締めつけ、松本は完全に自分を見失いそうになった。
だが、目の前の光は、何かを訴えていた。
彼の意志が強く反響し、その光に魅了されているのを感じた。
無意識のうちに、松本はその光に向かって走り出していた。
すると、周囲の影が彼を引き戻そうとしたが、その強い光は彼を包み込むように導いた。
実際、彼がその光に触れた瞬間、全てが消え去った。
松本は目を覚まし、驚いた表情のまま天井を見上げていた。
見覚えのある自室の寝床に戻ってきていたのだ。
全てが夢だったのか？安堵した松本だが、心には薄らとした不安が残った。
夢の中で出会った友人の顔と、閉じ込められたかのような感覚が忘れられない。
彼は一瞬、再びその夢の世界に戻ることを恐れたが、それと同時に、光が彼に何かを伝えようとしたのではないかと考えた。
夢での出来事が、彼の人生に何をもたらすのか。
それはまるで、消えてしまったかのような人々の思いや、彼自身の未練。
それでも、松本は光を求め、未来を選び取ることを決意した。
次回、夢の中でまた会えることを希望しながら、彼は眠りに落ちた。
