ある夜、真理は疲れ果てて帰宅し、ベッドに倒れこむように寝入った。
仕事のストレスからくる頭痛が彼女を苛み、夢の中でさえ休まることはなかった。
しかし、その晩の夢はいつもと違った。
彼女は、まったく知らない場所に立っていた。
そこは薄暗い森の中、静寂に包まれた場所で、間近に見える古びた神社が一際目を引いた。
真理は、神社へと足を運ぶ。
神社の周辺には人影が見当たらない。
彼女は思わず不安になり、戻ろうとしたが、不思議と足が動かない。
神社の奥には小さな鳥居があり、彼女はその下をくぐると、突然視界が歪んだ。
周囲の空気が重たくなり、耳元でささやくような声が聞こえ始めた。
「この場所に戻る者、真の証を受け入れよ。」
声に導かれるように、真理は神社の中へと進む。
そこには、いくつかの道が分かれており、一つは光のあふれる場所へと続いているように見え、もう一つは深い闇の中へと消えていた。
迷った真理は、無意識のうちに暗い道を選んでしまった。
進むほどに身体が重く感じ、心臓が鼓動の音を立てる。
その瞬間、夢の中の世界が一変し、彼女は夢の中で自分が気づかないうちに、何かに吸い込まれていく感覚を覚えた。
目の前に現れたのは、かつての同僚の裕介だった。
彼は目を大きく見開き、真理に向かって「戻れ、戻るんだ」と必死に叫んでいた。
しかし、真理は何も答えられなかった。
彼女は、裕介が消えてしまうかのように感じながらも、その場に留まることしかできなかった。
次の瞬間、彼女は幻想的な色彩の世界に引き込まれた。
美しい風景が広がっているが、どこか違和感を覚える。
人々が顔を隠し、誰も彼女に触れようとしなかった。
その空間の中で、周りにいる人々は次々と消えていくことに気づいた。
彼女の目の前にも知人たちが現れ、もがいているようだったが、彼女はその姿に目を背けた。
心の中に黒い影が忍び寄り、恐怖が増していく。
夢の中で自身が忘れ去られていく感覚に、真理は言葉を失った。
そのとき、またしても裕介の声が聞こえた。
「真理、夢の中から抜け出せ。お前は戻るべきなんだ!」真理は気を引き締め、裕介の言葉を思い出した。
恐怖に屈しないように心の底から叫んだ。
「戻りたい!」
その瞬間、彼女は一気に引き戻された。
夢の中の風景が崩れ落ち、再び彼女の目の前にはあの神社の森が現れた。
しかし、そこは元のものとは違い、どこか不気味な様子を見せていた。
真理は急いで鳥居をくぐり抜け、神社を後にする。
目を覚ましたとき、彼女はいまだに汗をかき、心臓が激しく鼓動していた。
しかし、体は彼女の想像を越えて疲れ果てていた。
夢の中の出来事が現実であったかどうかはわからなかったが、一つだけ確かなことがあった。
彼女はもう二度とあの森に戻らないと誓った。
数日後、真理は突然、再び神社の夢を見てしまう。
夢の中で、彼女は裕介を見つけた。
彼は彼女を待ち続け、「真理、早く戻って来てくれ」と訴える。
彼女の心に恐怖と安堵が入り混じりながら、新たな悪夢が彼女を再び包み込むのを感じた。
彼女は夢の中で再び彷徨い、戻るべき場所を見失い続けていた。