「壊れた道の再生」

狛という青年は、遠く離れた村へ向かう途中、ひと際不気味な道を見つけた。
この道は、彼の祖父が昔から避けていた場所だった。
村人たちは、その道には誰も近づかないよう警告していたが、狛はあまり気にせずに歩き続けた。
どこか惹かれるものがあったのだ。

道は次第に薄暗くなり、周囲の木々も傾くように生い茂り、空には重い雲が垂れ下がっていた。
その時、彼はふと視界の隅に何かが動くのを感じた。
背筋がぞくりとしたが、好奇心が勝り、彼は足を前に進めた。
すると、道の片隅に立つ古びた石の欠けたような狛犬が目に入った。
その表情は、恐ろしげでありながらも、どこか哀しげにも見えた。

「今日は特別な日だ」

突然、背後から声が聞こえた。
振り返ると、そこには誰もいなかった。
ただ、押し寄せる風が道を吹き抜け、まるで彼を誘うように感じられた。
狛は不安を感じながらも、その声に引き寄せられるように進んだ。

道を進むにつれ、周囲から妙な視線を感じるようになった。
道の両脇には、目に見えない何かが彼を見つめているようだった。
狛は次第に不安でいっぱいになり、足早に歩くことにした。
しかし、その時、意図せず彼の足元に何かが触れた。
見下ろすと、そこには泥だらけの手がついていた。

「助けて…」

その声は、暗闇から響くように耳に入った。
狛は慌てて距離をとろうとしたが、足がすくんで動けない。
恐怖心が彼の心を締め付け、体が重く感じられた。
泥の中から這い出てきた影は、次第に形を成し、狛の目の前に現れた。
それは、彼がかつての村で聞いた、道にまつわる伝説の敵、「壊れた者」だった。

「この道を通る者よ、私と戦え」と、壊れた者は低い声で言った。
その姿は不気味で、身体は無数の破片に砕かれているように見えた。
その瞬間、狛は直感的にこの道がただの道ではなく、過去の呪いが籠もっている空間であることを悟った。

「なぜ、私と戦う必要があるのだ?」狛は恐る恐る問うた。
壊れた者は笑った。
その笑い声は、響き渡るように不気味で、狛の心をさらに冷やした。

「私が敵となるのは、そこにいる者たちを壊すためだ。彼らを救いたいのか、それとも壊したいのかを選べ。選択がすべてを決定する。」

狛は自らの心と向き合った。
どれだけ不安で恐ろしい存在でも、自分が無視してきた道の過去に目を向けなければならないことを。

「選ぶのは難しいが、私はあなたを受け入れ、そしてこの道の歴史を変えたい。あなたを壊すのではなく、共に進む道を見つけたい!」と宣言した。

その瞬間、世界が激しく揺れ動いた。
壊れた者の形が変わり、彼の身体は次第に整い始めた。
その過程で、道の形も変わっていく。
狛は恐怖を抱えたままも、彼と向き合うことで強くなろうと決心した。

「あなたの道も、私の道も、今は一緒だ。共に新たな未来を構築しよう」という言葉が、暗闇を照らし出した。
すると、途端に周囲が明るく変わった。
道は整えられ、木々の横には温かい光が差し込んだ。
その瞬間、かつて壊れた者は再生の力を得た。

狛はそのまま道を歩き続けた。
過去は壊れ、未来へ向かう力に変わった。
彼と壊れた者は、共に新たな道を歩み出したのだった。

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