昔、静かな街の片隅に、古びたレジャー施設があった。
その名も「夢の楽園」。
今はもう誰も足を運ばない、壊れかけの遊具や薄暗いベースキャンプが残されているだけであった。
子供たちのにぎやかな声は過去のものとなり、施設は朽ち果てていく一方だった。
ある日、高校生の佐藤明は、友人たちと共にそのレジャー施設を訪れた。
彼らは肝試しのつもりでその場所を選んだのだが、明はどこか不安な気持ちを抱えていた。
友人たちが廃墟となった施設の内部を探検を始めると、明も渋々ついていった。
暗い中で明と友人たちは、薄汚れた遊具やサビついた滑り台を見つけ、ざわめきながら進んでいった。
ふと、明は一際目を引くものを見つけた。
それは、ピカピカの大きな目の形をしたオブジェだった。
レジャー施設のシンボルだったのだろう、目はどこか楽しげにこちらを見ているようで、しかしどこか冷たい印象も抱かせた。
「おい、これ、ちょっと怖くないか?」明は友人に声をかけたが、彼らは笑って無視した。
明はその目に吸い込まれそうになりながらも、背筋が冷たくなる感じを覚えた。
「ねえ、これ本当に大丈夫なのかな?」明は言い続けたが、友人たちは次第に興奮し、探検を続けることにした。
明は内心の不安を押し殺しながら、彼らの後をついていく。
その時、突然、施設全体が不気味な音を立て始めた。
明は驚いて視線を外したが、再びその目を向いた瞬間、彼の視界が黒くなった。
次に目覚めたとき、彼は孤独にその目のオブジェの前に立っていた。
友人たちの姿はどこにも見当たらない。
「あなた、私を見つめているの?」明はただのオブジェだと自分に言い聞かせたが、その目は冷たく光り、彼を見つめているように感じた。
彼は恐怖に駆られながらも、思わずその目の前に立ち尽くしていた。
「戻る方法が知りたくないの?」突然、耳元にささやく声がした。
その声は、まるで目そのものであるかのように、明の心に響いた。
明は思わず振り返ったが、誰もいない。
ただ薄暗い暗闇が広がっているのみだった。
「あなたの心の奥に、彼らの瞳が宿っている。彼らを失ったのは、壊れた心が原因だ。だから、目を見つめなさい…」その声は徐々に明の心に染み込んでいった。
明の意識は徐々に揺れ動き、自分が何をしているのかさえ分からなくなってしまった。
彼は再びその目を見つめた。
すると、目の中に自分の姿が映る。
それと同時に、彼の周りに友人たちが現れた。
彼らは一様に恐怖に満ちた表情を浮かべていた。
彼らの瞳はどこか無機質で、生気を失っている。
「助けてくれ、明!」一人の友人が叫ぶ。
「ここから出たい!この目のせいで、私たちが壊れてしまう!」
明は心の中で何かが壊れかけているのを感じた。
それは仲間たちとの絆、そして楽しかった思い出がゆっくりと消えていくことに対する恐怖だった。
彼は思わず目を閉じ、深呼吸をしてみた。
「目を見つめて、彼らに向き合わなければならない…」息を吸い込み、明は再度目を見つめ直した。
すると、目の中から色とりどりの光が渦巻いて彼を包み込んだ。
その瞬間、彼はかつての楽しい日々を目撃した。
しかし、その直後に友人たちが一瞬にして消え去り、明一人立ち尽くす。
彼は思わずその目を背けた。
そして、「もしかして、もう戻れないのか?」という不安が襲ってきた。
街の夜は静まり返り、雷鳴が遠くで響いていた。
明はもう一度目を向け、見たことのない未来を想像しながら、目を閉じた。
壊れた楽園からの帰り道が見つけられることを、心の奥で願っていた。