「壊れた心の洞窟」

古びた村の洞窟には、長い間、人々が近づくことを避けてきた禁忌の場所があった。
その洞窟は、村の外れにある小道を進んだ先にひっそりと佇んでいた。
周囲は鬱蒼とした木々に覆われ、薄暗い雰囲気が漂っている。
その洞窟については、語りたくないことが語り継がれ、特に村人の間では「壊れた心の汚れた場所」と呼ばれていた。

ある日の夜、好奇心旺盛な若者たちが集まり、洞窟の真実を確かめることにした。
彼らは「怖い話なんて信じていない」と高を括り、 lantern の明かりを持って洞窟へと足を運んだ。
入ると、湿った岩肌が露わになっており、空気はひんやりとしていた。
奥へ進むにつれ、彼らの間には不安な空気が流れ始める。
洞窟の奥には、奇妙な彫刻が施された壁があった。
それは、悔いの表情を浮かべた人々の姿であり、目を見開いたまま固まっているかのように見えた。

一人の若者が、ふと発した。
「どうしてこんなものがあるんだ?」と。
周りの者たちはその言葉を無視し、さらに洞窟の奥へと進んだが、何かがその心に引っかかるようだった。
その瞬間、後ろからかすかな声が響いた。
誰も発したはずのない声に、彼らは息を呑んだ。
「来るな……ここには、触れてはならないものがある」と、かすれた声が再度響いた。

恐怖心で震えながらも、彼らはその声の出所を探し始めた。
しかし、洞窟の奥深くへ進むにつれ、視界もだんだんと薄れていった。
やがて、結局彼らは一つの大きな空間に辿り着いた。
その中央には壊れた像が存在した。
その像は、まるで自らの手で自らを壊したような姿をしていた。
表情は悔恨に満ち、無様にあらわになったかのように見える。

若者たちは、その光景に圧倒された。
一人が勇気を出して近づくと、突然、洞窟の奥から強い風が吹き抜けた。
暗闇の中から、声が再び響く。
「お前たちも悔いることになるだろう。」驚いて後ずさるが、すでに逃げる道は閉ざされていた。
彼らはその場で立ち尽くし、声の正体を探ろうとしたが、何も見えないままだった。

その瞬間、彼らの心に眠っていた過去の話が呼び起こされた。
失敗や後悔、繰り返すことのなかった選択の数々が、次々と浮かんだ。
彼らの目の前で壊れた像が、まるでその悔いを映し出すかのように形を変え始めた。
その姿は、もはや人間のものではなく、目を見開いて叫び続ける顔に映し出された。
若者たちは恐怖に震え、逃げようとするが、洞窟の出口は完全に閉じられてしまっていた。

あたりは静寂に包まれ、ただその声だけが響き渡る。
「あなたたちの悔いを、私の姿に重ねて感じている。出られると思ったか?」その言葉を聞いた瞬間、彼らは周囲が真っ暗になり、意識が遠のいていった。

次に彼らが目を覚ました時、村の外れには戻っていることに気がついた。
しかし、彼らの心には恐怖と後悔が深く刻まれ、いつまでもあの洞窟の声が耳に残っていた。
そして、これ以降、彼らは「禁忌の洞窟」という言葉を口にすることなく、心の奥底でその恐怖を抱え続けることになった。
彼らは、二度と戻ることのない場所を振り返ることすらできなかった。

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