秋の夜、静まり返った道を一人で歩く佐藤は、どこからともなく感じる不気味な気配に背筋が凍る思いだった。
周囲は闇に包まれ、月明かりが道をかすかに照らす。
その明かりの中に、目のような光が幾つも点在しているのを彼は見つけた。
よく見ると、それは小さな反射する何かではなく、まるで人の目のようであった。
彼は不安を覚え、歩く足を早めることにした。
しかし、目の光は彼の周りを追いかけるように動く。
微かに呻き声が道の向こうから聞こえてきた。
振り返ることができず、一歩前に進むだけだった。
心の中で何かが崩れ落ちる音が聞こえ、彼の内面にも不安がうごめいているのを感じた。
佐藤は、目が光るこの道が一体何を意味しているのかを考えた。
もしかしたら、彼はこの道で何かを見逃していたのかもしれない。
いつかの記憶が浮かんでは消えていく。
彼は子供の頃、友人と一緒にこの道を歩いたことを思い出した。
その時は、ただの遊び道だったのに、今や悪夢のような悪意を帯びた場所に変わっていた。
目の光がさらに近づいてくる。
急かされた心臓が高鳴る。
しかし、何とか冷静さを保とうとする佐藤は、歩く足を止めずに前へ進んだ。
ふと、「助けて、私を見捨てないで」という声が耳に入った。
声は徐々に大きくなり、彼の周りで目が点滅するように揺れている。
その瞬間、彼は理解した。
この道は堕ちた者たちの道であり、彼らの目は彼を捕らえるためのものだと。
震える手で携帯電話を取り出し、光を当てようとしたが、電源が入らなかった。
目の存在が全身を不安で包み込み、霧のような感覚が彼を包み込む。
絶望が彼の心に浸透していく。
「堕ちていく者の影がこの道を支配している…」そう思った。
急に目の光が消え、周囲が静寂に包まれた。
彼は逃げ出すべきだと思ったが、どこへ行けば良いのかわからない。
「もう終わりだ」と運命を受け入れかけたその時、彼は突然、目の光の中にぼんやりと女性の姿を見つけた。
彼女は目を閉じ、悲しみに満ちた表情で佐藤を見つめている。
その瞬間、何かが彼の心に刺さった。
「彼女もこの道の一部なのか?」
その女性の目から流れる涙が、彼に何かを伝えようとしているように思えた。
「私を見捨てないで」と小さな声が、再び耳に聞こえる。
その瞬間、佐藤は決意した。
彼女のために、ここから出るために戦わなければならない。
彼は足を進め、自らの恐怖を振り払い、道の先に見える薄明かりに向かって進んだ。
すると、目の光が再び彼を包み込む。
しかし、彼の心に芽生えた勇気が、堕ちることを拒んだ。
その瞬間、目の光が消え、闇が彼を取り巻く。
佐藤はついに暗闇と決別し、目の前に現れた明るい世界にたどり着いた。
何とか無事にこの道を抜け出すと、彼の心に女性の姿がまだ残っていることを思い出した。
彼は、堕ちた者たちの声を忘れず、彼女のように苦しむ者たちを助ける使命を持てるよう、心に誓った。