神々が住むとされる静かな山奥には、古くから伝わる神の神社があった。
神社は長い間、地元の人々に大切にされ、神々に感謝を捧げる場所として知られていた。
しかし、その神社には一つだけ恐ろしい伝説が残っていた。
かつて、芽衣という若い女性が神の加護を求めたが、その願いが執着に変わってしまったことで、彼女は自らの運命を狂わせることになったという。
芽衣は恋をしていた。
しかし、その恋の相手は、彼女の思いを全く受け入れようとはしなかった。
彼岸からの越えがたい壁のように、その恋は芽衣にとって苦しい現実だった。
彼女は愛を手に入れるために、神社に通い続けることにした。
神に祈りを捧げ、彼女は執念を燃やした。
毎晩、月明かりの中で神に頼み込み、彼の愛を勝ち取るように願った。
次第に、芽衣のその熱心な祈りは、次第に異常な執着へと変わっていった。
彼女は信じられないほどの集中力を持って神社に通い、誰にも気付かれないように、ひたすら彼にお願いをし続けた。
しかし、神社の周囲では次第に奇妙な現象が起こり始めていた。
周囲の木々がささやく声となり、神社の境内には不気味な雰囲気が立ち込めるようになった。
ある晩、芽衣は神社で一晩を過ごすことを決意した。
神々に捧げる花を手に持ち、彼女は月明かりの下で静かに息を潜めていた。
その時、視界の隅に不気味な影が見えた。
目をそちらに向けると、そこには彼女の想い人、涼介が立っていた。
驚きと喜びの中、芽衣は駆け寄ったが、涼介は一瞬彼女を見つめた後、彼女の目の前から消えてしまった。
芽衣の心には衝撃が走った。
願いが通じたのか、彼は神々に呼ばれているのだろうかと、心から思った。
その後、彼女は毎晩涼介に会うことを夢見て神社に通い続けた。
しかし、涼介の姿は二度と現れなかった。
代わりに、不気味な声や影が芽衣の周囲を取り巻くようになり、彼女を脅かした。
神の神社の中に秘められた怨念に気付くことなく、願い続ける芽衣の心は、次第に次元を超えた力を目覚めさせてしまった。
ある夜、芽衣は夢の中で涼介の声を聞いた。
「私を忘れないで、執着し続けて」と。
芽衣はその声に執着を強め、目を覚まして、神社に向かった。
そこで彼女は、申し訳なさそうに微笑む涼介の幻影を見つけた。
それは妖しく輝く姿で、彼女の方に近付いてきた。
しかし、その瞬間、芽衣は彼が持つ陰のような執念に気づいた。
彼女の心の奥底に潜む欲望と愛の形が、そのまま涼介の姿と結びついてしまった。
芽衣は冷静に装っていたが、心の奥では彼への執着が怒涛のように押し寄せ、彼女の意識は混沌と化した。
神々の怒りが瞬間的に彼女に降りかかり、神社は恐ろしい光に包まれ、彼女の心は恐れと後悔で満ちた。
彼女は涼介を解放させない、自らが求めていたものは真実の愛などではなく、ただ一人の執着に過ぎなかったと悟った。
その瞬間、彼女の目の前で涼介の姿が崩れ、一瞬にして姿が消え去った。
神々の意志に逆らった芽衣は、彼女の執念によって生まれた暗い影に取り込まれ、彼女自身が失われた。
神社は今も静かに佇み、夜ごとに戻らない芽衣の叫びが風と共に響く。
願いが執着であったと気づくことができなかった彼女は、神々の加護から見放され、永遠にその影に飲み込まれてしまったのだった。