ある日のこと、大学生の佐藤翔太は、大学の近くにある古びた公園に足を運んでいた。
公園の中央には大きな石があり、地元の人々から「地の石」と呼ばれている。
その石には、古くから伝わる伝説があった。
「この石に手を触れた者は、気が抜けてしまう」と言われ、誰もがその言葉を信じて避けていた。
しかし、翔太は好奇心からその石に近づくことにした。
彼が石に触れると、冷たい感触が彼の手を包み込み、一瞬の静けさが訪れた。
まるで時間が止まったかのように、辺りの空気が重くなるのを感じた。
翔太の心の中に、何かがぎゅっと詰まったような感覚が広がっていく。
気が抜けるとはこのことかと、彼はヒリヒリとした不安を覚えた。
その夜、翔太の夢の中に「地の石」の声が現れた。
「封じられた文、解き放つ者よ。私の気を感じることができるか?」その声は耳元で囁くように響いた。
驚いた翔太は目を覚ましたが、夢の中の体験が忘れられず、再び公園に行くことにした。
翌日、彼は公園に足を運び、もう一度その石に触れた。
すると、またしてもあの冷たい感触が彼を包み、再び夢の中と同じ声が聞こえた。
「お前は選ばれた。私の文を読み解き、運命を受け入れよ。」翔太は恐れを感じつつも、その声に引き寄せられるように石に耳を当ててみた。
ところが、周囲の静けさが突然破られ、風が唸る音が響き渡った。
「選ぶ者よ、選ぶことができるか。逃れることができない運命を。」そのとき、翔太は自分がこの石に取り込まれつつあることを理解した。
この石が、他者をためらわせることで自らを守ってきた理由がわかると同時に、彼自身がその固まりに飲み込まれる可能性があると感じた。
その結果、翔太は「地の石」にまつわる歴史を調べ始めた。
古文書を紐解くうちに、昔の村人たちがこの石を封じ込め、悪用を防ぐために文を記したということがわかった。
そしてそれは、ある者の「気」を消すためのものであった。
翔太は運命に逆らおうと、「私は逃げることができる」と心の中で強く叫んだ。
しかし、身動きがとれないほどの重圧に押し潰されそうになり、彼は恐怖を感じた。
体が動かない。
まるで足元がズッシリとした石で覆われていくような感覚に襲われた。
「逃げられない、私はこの石に飲み込まれるのか?」翔太は絶望的な気持ちに陥り、声にならない声で助けを求めた。
運命に立ち向かう決意を固めた翔太は、「もう一度、声を聞かせてくれ!」と叫んだ。
すると、石の中から響くように声が返ってきた。
「お前の気を感じる。だが、そこには恐れしかない。」翔太は震えながらも思いを強く持ち続けていた。
「私が受け入れたいのは、自分自身だ!」
その声に対する回答は、まるで響く空気の中から湧き上がるようにして、彼の内面から力を引き出した。
揺れ動く気の中で、石に宿ったかつての存在たちの意志が彼を包み込み、翔太は自らの声を響かせた。
「この地の石がもたらす運命を解き放つ!封じ込められた文を、必ず読み解いてみせる!」
その瞬間、彼の心のスイッチが切り替わった。
重圧が解け、彼は視界の中を取り戻した。
地の石は静かに彼に微笑んでいた。
周囲の空気が薄くなり、彼の体から何かが解放される感覚があった。
翔太は生き延びたのだ。
その後、彼は石の伝説を後世に伝え、同じように運命に恐れを抱く者たちに警告を発し続けることになった。
「迷わず、恐れず、自らの気を信じて進め」と。
彼は公園の土の中で再び気を感じることで、自身の存在を確立することができたのだ。