作は、新しい学校に転校してきたばかりの中学生だった。
彼女は少し内気で、クラスメートと打ち解けるのに時間がかかるタイプだったが、特に本を読むことが好きで、図書館で過ごすことが多かった。
この学校にはたくさんの本があり、特に古い書籍が多く所蔵されていることで有名だったが、同時にその学校には奇妙な噂があった。
ある晩、作は放課後の図書館で最後のページをめくっていた。
静まり返った館内は、ほんのりとした灯りに包まれ、どこか神秘的な雰囲気を醸し出していたと同時に、その空気の中に「い」に関する話があった。
不気味な「い」ですぐに思い出されたのは、学校の過去に起きた事故のことだった。
数年前、ある生徒が図書館で不審な現象が続いた末に、行方不明になったという噂だ。
その後、彼の影を見たという報告が絶えなかった。
作は、他の生徒たちが帰った後もじっくりと読書に没頭していた。
しかし、ページをめくると、ふと自分に視線を感じた。
周囲を見回すと、誰もいない。
この感覚は気のせいだと思おうとしたが、その瞬間、背後から低い声で「助けて」という囁きが聞こえた。
作は恐怖で動けなくなり、振り返ることさえできなかった。
心臓が速く鼓動する音を感じる中、作は思いながら、声のする方へ意識を向けた。
「私はここにいる」という声が鮮明に響く。
作は恐れながらも、何とかその声に導かれるように立ち上がり、声の主を探し始めた。
すると、彼女は一冊の古びた本の前に立っていることに気づく。
それは他の本とは個性的な表紙で装飾されており、まさに異様な雰囲気を纏っていた。
作はその本を手に取り、表紙を捲った瞬間、まるで時が止まったように感じた。
ページをめくるたびに、頭の中に不気味な映像が浮かび上がり始めた。
それは、かつてこの学校で何が起こったのかを示す映像だった。
図書館で書かれた文字がどんどん不明瞭になり、作が確かに持っていることを知っているはずの「い」が彼女の周りを取り囲む。
作は恐怖に駆られ、すぐに本を閉じようとするが、その力に引き寄せられて手が離せなかった。
その時、図書館の電気がパチパチと点滅し、明かりが消えたりついたりを繰り返す。
作は恐れて目を閉じたが、声はますます大きく、切実になっていった。
「助けて、ここから出して…」その声の主がもう一人、現れた。
それは行方不明になった生徒だった。
彼の顔は青白く、悲しみを背負った目が作を見つめていた。
「何が起きたの?」と作は問いかける。
その瞬間、彼は指を差し、本の中へと促した。
作は特に躊躇う間もなく、運命に背を向けることはできないと直感し、再び本を開いた。
すると、彼の姿が徐々に薄れていく中、学校の古い秘密が次々と明らかになっていった。
何ページか読み進めると、学校の歴史の中に、彼の存在が高貴な精神として語り継がれていたことがわかる。
彼は図書館を守ろうとしている守護霊だった。
しかし、彼は何か別のものに「い」として囚われ続け、現世に留まることができずにいた。
作は心に決めた。
「私はあなたを助ける!」 読み進めるにつれて、作の周囲が光で包まれ始め、彼の悲しい声が消えていった。
その時、視界が白く澄み渡り、彼は笑顔で消えた。
朝、目を覚ました作は、図書館で本を持って横たわっていることに気づく。
その日から、彼の噂は途絶え、彼女の中には守られている自信が芽生えた。
彼には自分を大切に思う力が宿り、新しい学校生活が始まったのだ。
図書館での幽霊の物語は、彼女の心に永遠に残ったままであり、彼らの声を感じた時の奇妙な感覚は、彼女の中に共鳴を持つこととなった。