夏のある晩、涼を求めて小さな島に渡った村人たちは、その島にまつわる奇妙な話を耳にしていた。
この島には、かつて神社があったが、今はひっそりとした森に覆われ、誰も近づくことがなかったという。
特に、中に住むと言われる「陰」は、訪れる者を決して逃がさないという噂が広まっていた。
その日の夜、村から来た数人の若者たち、特に健太と美咲は、肝試しのためにその神社跡に行くことを決めた。
他の仲間たちは不安がるが、健太は自信満々に笑い、「そんなのただの噂だろ! 行ってみようぜ!」と促す。
美咲も彼に影響され、興味本位でついて行くことにした。
暗い森の中を進んでいくと、木々の間からは不気味な視線を感じた。
月明かりが彼らの足元を照らしていたが、周囲は静まり返り、不気味な空気が漂っていた。
やがて、神社の跡に辿り着くと、木々が不自然に生い茂り、古びた祠がかすかに見えた。
その異様な雰囲気に実感が湧いてくる。
「これが陰のいる場所か……」美咲が呟くと、健太は笑い飛ばす。
「怖がるなよ。大丈夫、何も起こらないって。」
祠の前に立ち、彼らは一緒に手を合わせてみせた。
すると、その瞬間、冷風が吹き抜け、祠の中から低い声が響いた。
「中に入れ、入れ……」
全員は一瞬凍りついた。
何かが彼らを招いている。
美咲は恐れを感じながらも、健太に引っ張られて無理矢理中に入ることになった。
厚い木の扉を押し開けると、そこには古い神具が置かれており、薄暗い光が差し込む場所だった。
ものすごい重苦しい空気が彼らを包み込む。
健太は勇敢に神具を眺めながら、「これ、何だと思う?」と無邪気な声で語りかけたが、美咲は体が硬直していた。
「もしかして、これが陰の……。」
その瞬間、周囲が揺らぎ、彼女の視界が歪んでいった。
何かの気配が強くなり、彼らの背後に影が現れた。
まるで人間の形をした黒い影。
それは静かに彼らに寄り添い、彼の中に何かを問いかけるような視線を向けていた。
健太は震えながらも前に進むが、美咲は恐怖で決して動けなかった。
「帰りたくないのか?」その声は陰のものか、周囲の空気そのものか、彼女の耳に残る。
友人たちも次第に震えながら彼女を振り向くと、健太と仲間が一様に薄く笑っている。
「良いものを見せてやる」と怪しく告げる。
恐ろしさに耐えかね、友人たちは焦って出口へ向かおうとする。
しかし、影はいつの間にか彼らの視界を覆い、その場に留め置くように感じられた。
全員が手を取り合って逃げようとするが、陰は笑い声をあげた。
「お前たちは中に入れ、戻れないのだ。」
仲間たちは次々に恐れに犯され、逃げ出すこともままならず、影の囁きは少しずつ大きくなっていく。
その声は、心の奥深くに刻まれ、彼らをさらに引き込んだ。
やがて、健太も美咲もその場にとらわれ、自らの足元が重くなり、動けなくなってしまった。
「もはや出られない。」影は声に現れ、美咲達の心を蝕む。
「あなたたちが私の中に留まることを選んだのだから。」
すると、陽が昇ると同時に、村人たちが島に渡る見込みがあるも、香り高い香が漂う。
そして神社は静まり、彼らの姿は決して見つからなかった。
村の人々には、ただ静かな島の夜しか感じられず、誰もその島に注意を払うことはなかった。
今でもその島に行く者は、見えない何かに見守られ、少しの影さえも感じることがあると言われる。
彼らの影は依然、島の中に囚われ、夜空を仰いでいるのだ。