「囚われた音楽室の少女」

若い頃、私は友人たちと共に、古い廃校を訪れることにした。
この廃校は、地域の人々に忌避されている場所で、数十年前に一人の生徒が自殺したという噂があった。
友人たちと肝試しをするつもりで、恐怖を感じる一方で、悪戯心もあり、勇敢さを試すような気持ちであった。

廃校の門をくぐると、時が止まったかのような空気がそこには流れていた。
足元では、長い間放置されていたため草が生い茂り、扉は錆びつき、窓は割れていた。
懐中電灯の明かりが、埃っぽい教室の中に風を運ぶように照らす。
心臓が高鳴り、恐怖と期待が交錯している。

友人たちはそれぞれのクラスを探索し始めたが、私は一人、特に不気味な雰囲気を醸し出している音楽室に導かれるように入った。
古いピアノが一台、その場に鎮座していた。
鍵盤は埃で覆われ、ほとんど使われていないように見えたが、そのピアノからは、何か引き寄せられるような気配を感じた。
引き寄せられた心の中で、私は調べてみたくなり、そっと鍵盤に手を置いた。

何気なく指を動かすと、途中で止まっていた音楽が、どこか傷んだように響いた。
すると、不意に背後から冷たい風が吹き抜け、扉が音を立てて閉まった。
驚きと恐怖に震えながら振り返ると、そこには無表情な少女が立っていた。
彼女の目は光を失い、かつてここで何かがあったことを語りかけるように見つめていた。

「あなたも、落ちてしまったのね」と彼女は言った。
その声は、微かに震えており、どこか切なさを持っていた。

私はその言葉の意味を理解できなかった。
その瞬間、今日が特別な日であることに気づいた。
彼女が亡くなった日が、今日だったのだ。
過去の記憶が一瞬にして蘇り、心が不意に冷え込む。
彼女の魂はこの場所に囚われ、何かを求めているのだと感じた。

私は取り乱し、逃げようとした。
しかし、俺の前には再び少女の影が立ちはだかる。
彼女の周りには冷たい霧が立ち込め、次第に視界が狭まっていく。
友人たちの声も遠くなり、静寂に包まれた。
私は膝をつき、恐怖に捕らわれた。
魂の声が耳元でささやく。
「私を忘れないで、私を見つけて」と。

その時、私は気づいた。
彼女はただ呼んでいるのではない、私もまた、何かを失い、どこかへと落ちてしまったのだということに。
いつしか私は彼女の存在に共鳴し、共に苦しみ、魂の一部を感じられるようになっていた。

暗闇の中、私は少女の声を受け入れ、彼女の存在に寄り添うように感じた。
どこかで彼女の心の痛みが共鳴し、私の中で波紋のように広がっていく。
それはまるで、彼女の魂が私の内に流れ込み、消え去ったような感覚だった。

やがて、時の流れが再び動き始める。
私は気がつくと、音楽室を出て、廃校の廊下を歩いていた。
友人たちが私を心配そうに呼んでいた。
その瞬間、心の奥に彼女の存在が強く巣食っているのを感じた。
彼女に呼ばれるたび、私は彼女の魂に寄り添う責任を抱えた。

「私を見つけて」と彼女の声が、強く心の中で響く。
私はその声に従うように、廃校を後にすることができなかった。
あの日以来、私はその少女と共に生きているのだ。
彼女の魂が漂う廃校の、どこかに自分も落ちてしまったように感じながら。

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