修は、古びた小学校の廃校舎に興味を持っていた。
彼は好奇心旺盛な学生で、そんなところに足を踏み入れることが好きだった。
ある晩友人たちと肝試しをするため、修はその廃校舎に足を運ぶことにした。
学校の周りは薄暗く、虫の声だけが響く静寂に包まれていた。
彼らの心には少しの期待と、恐怖が混ざり合っていた。
修は他の友人たちと共に、校舎の扉をギィと開けた。
中に入ると、古い教室の黒板や机が埃をかぶり、かつての喧騒を静かに物語っていた。
明かりを持っているものはいただけないか、闇の中に浮かぶ修たちの姿が、まるで霊のように感じられた。
しばらく楽しそうに笑いあい、様々な話を交わしていたが、次第に不気味な空気が彼らを包み始めた。
「ねえ、ここに変な噂があるって知ってる?」友人の一人が言った。
彼の声には、少しの緊張が混じっている。
彼は続けた。
「この学校で亡くなった生徒がいるって。それに、彼女は自分の命を捧げたらしい。」
「命を捧げるって、何それ?」修は興味を持った。
話を聞くにつれ、彼の心の中で何かが揺らぎ始めた。
その生徒には特別な事情があったという。
彼女はとても優秀な生徒だったが、ある日突然、多くの命を救うために自らの命を終えてしまったと店の噂が広がっていた。
その噂にさらに興味を持った修は、教室の奥へと進んだ。
すると、突然、背後で何か音がした。
振り返ると、黒板の前に誰かの影が見えた。
その影は、かすかに笑みを浮かべているように見えた。
恐れを抱いた友人たちが修の周りに集まり、心臓が高鳴るのを感じる。
「ずっと待っていたんだ…」その声が教室の中に響いた。
修はその声に心を奪われ、思わず前進する。
その影は薄暗く、顔は見えなかったが、不思議と惹きつけられるような感覚が彼を包んでいた。
「あなたたちが来るのを…待ってたの。」
恐ろしさと興味が交錯する中、修はその声を無視できなかった。
「どうして待っていたの?」彼はその影に質問した。
「あなたの命が必要なの。」影は答えた。
その瞬間、修の心には恐怖が蘇る。
友人たちは恐くなって逃げ出そうとしたが、動くことができず、まるでその場に釘付けにされているようだった。
「私を助けて…私の命を半分分け与えることで、私を救い出すことができるの」その影は繰り返した。
その言葉に修は心揺さぶられ、彼女の苦しみを感じると共に、彼女を救うことで自らの命を捧げることの重さがのしかかってきた。
「どうする?彼女を助けるために、命を差し出せるのか?」友人たちの声が響く。
修は悩み抜いた挙句、彼女に向き直った。
「どうして命を犠牲にする必要があるんだ?それは変だ。生きることが最も大切なのに!」
影は思わず黙り込み、その場の空気が凍りついた。
しばらく沈黙が流れる。
やがて、影は消え、教室は再び静寂に包まれた。
友人たちは呆然としたまま、教室の外へと逃げ出した。
修も彼らに続いたが、心の中に何かが残ったように思えた。
それから何週間かが経ち、廃校舎の噂は島中に広まった。
しかし、修にはその出来事が忘れられなかった。
彼はあの時、命を捧げることが愛であるのか、それとも変であるのかの境界を考え続けた。
なぜなら、彼は兄妹や友人への愛を持ち続け、後悔の念とともに生きることが、彼にとって何よりも大切だと気づいたからだった。