ある晩、友人たちと共にキャンプを楽しむために山の中に小さなテントを張った。
時計を見ると既に夜遅く、月明かりが山の静けさを包んでいた。
私の名前は大輔。
今日はこのキャンプが特別な思い出になると信じて、仲間たちと焚き火を囲んで様々な話を交わしていた。
しかし、その夜、何か異様な雰囲気が漂い始めた。
友人の裕子が「この山には何かがいると聞いたことがあるわ」と口を開いた。
「特に夜になると、この辺りで不可解な音が聞こえるんですって。」その言葉に他の者たちも興味を持ち、話はどんどんエスカレートしていった。
「本当にそんなことあるの?」と、私が半信半疑で言うと、裕子は「試しに外に出てみたら?」と提案した。
私たちはとりあえず外に出て、周りを見回した。
静まり返った森の中、時折風が吹く音だけが響く。
しばらく待っていると、突然、かすかな音が耳に入ってきた。
それは男性の声のようにも、女性の囁きのようにも聞こえる不思議な音だった。
まるで誰かがこちらに向かって何かを訴えかけているように感じた。
私たちは顔を見合わせ、次第にその音に引き寄せられていった。
「行ってみよう」と私が言うと、全員が同意した。
音のする方向に向かって歩き出す。
「あそこに人影が見える…」裕子が指差した。
遠くに立つ影が明確に見えた。
「本当にあれは人なのか?」と、友人の智也がつぶやく。
影は動きもせず、ただ立ち尽くしている。
一歩ずつ近づくと、その影がどう見ても人間ではないことに気づいた。
影は不気味に揺れ、時折まばゆい光を放っていたように感じた。
近づくにつれ、音はさらに大きくなり、悲鳴にも似た声が私たちの耳元で響いた。
「もう止めよう、戻ろう!」と智也が叫んだが、私たちの足は冷たく、前に進むことができなかった。
影の周りには、干からびた枝や落ち葉が散乱し、異様な雰囲気が漂っていた。
そのとき、指が乾ききった手で掴まれたかのように感じ、私は驚いて振り返ろうとした。
だが、周りは完全に静止してしまった。
音も、動きも、何もかもが止まっていた。
「助けて…助けて…」と、音の主がはっきりと聞こえる。
私たちはその声に吸い寄せられ、まるで魔法にかけられたように影の元に引き寄せられる。
空気が淀み、息苦しさが襲った。
今、目の前の影が私たちに語りかけているのがわかる。
私たちにはその隙間を狙うかのように、望んでもいない記憶が流れ込み、呻き声が聞こえる。
「間が空いている…それを放つのが終わりだ…わからないのか?」その言葉に強烈な恐怖を覚えた。
私たちは急に意識が朦朧とし、意志を失いそうになった。
「帰ろう、帰ろう、帰ろう!」と必死に叫ぶが、声にならない。
その瞬間、暗闇の中で光が瞬間的に閃き、周囲が再び正常のように戻った。
私たちの目の前には、ただの森が広がっていた。
私たちは慌ててテントに戻り、心臓がバクバクする音を聞きながら、暖を取るために焚き火を囲んだ。
周囲は元通りの静けさに戻っていたが、皆の心にはあの不気味な音と影が残っていた。
朝が来て、私たちは無事にキャンプ場を後にした。
しかし、今でもあの夜に聞いた音のことは鮮明に覚えている。
それが何のために私たちを呼び寄せたのか、私たちは考え続けることになる。
その山には、未だ人知れずうごめく音があるのだろう。
時折、それが夜の静寂の中に訪れ、誰かを呼び寄せているのかもしれない。