「呪われた花の庭」

古い町の端にひっそりと佇む一軒の家、そこには江田という青年が住んでいた。
この家は先代から受け継がれたもので、周囲の住民たちからは「呪われた家」として恐れられていた。
しかし、江田はそんな噂には目を向けず、静かな日々を送っていた。
彼は古い庭に咲く季節外れの花や、近隣の自然を愛する穏やかな性格だったからだ。

秋の終わり、ある晩、江田は庭で星空を見上げていると、ふと異様な硬さを感じた。
背後から、何かが彼をじっと見ている。
振り返ると、そこには何もない。
ただ静寂だけが広がっていた。
しかし、心の中には不安が募り、さまざまな想念が彼を襲う。
こうした悪恐れは、町の人々の言う「呪いのようなもの」だと感じていた。

数日後、江田が家の中で本を読んでいると、突然、庭の花が一斉に揺れ始め、その勢いで何かが吹き抜けてきたような音を立てた。
心臓が高鳴る。
「敵が来たのではないか。」彼は思った。
これまで感じたことのない恐怖が彼を包んだ。
何かが彼を狙っているのかもしれない。

夜が深まると、庭の花が急に成長し始めた。
数時間のうちに、彼の背丈を超えるほどの高さになっていた。
その潔斎した様子を見て、江田は思わず退いた。
まるで花々が敵意を持っているかのようだった。
彼は視線を感じて再び振り返るが、どこにもその姿は見当たらない。
どうしようもない不安が心を蝕み、寝ることすらできなくなった。

次の日、江田は決意した。
恐れずに真実を探るために、庭の奥に足を踏み入れた。
草木は彼に身を隠すかのように覆い被さり、不気味に揺れ動く。
何かがそこに潜んでいる。
目を凝らすと、土から小さな手が出てきて、彼を引き入れようとする。
気づくと、江田はその手を振り払い、全力で逃げた。

その夜、江田は夢の中で不気味な影と向き合った。
彼の過去の記憶が映し出され、幼い頃の自分と向き合わせていた。
力量で上回った影は、彼の敵だったのだ。
恐れ、悔恨、劣等感が全て彼に向けられていた。
江田はその影を受け入れなければならないことに気づいた。
「自分の中にある敵を知ることが、真の敵を封じる鍵だ」と、夢の中で声が響いた。

朝日が昇る頃、江田は心の中の影に向き合うことを決意した。
自身を見つめると、心のどこかで感じていた恐れも、彼自身が生み出したものであると理解した。
影に手を差し伸べると、思ったよりも柔らかい感触がした。
その瞬間、無数の花が一斉に咲き乱れ、彼の周囲は色とりどりの光で満たされた。

それからというもの、江田は自身の内面を見つめ続けた。
過去の自分と和解し、その敵を克服することで、彼はついに呪いを解いたのだった。
彼の庭は再び花々で賑わい、町の人々もかつての恐れを捨て、彼との関係を築いていくことができた。

陰に潜んでいた敵は、実は外にいるのではなく、自らの心にあった。
この気づきを得た江田は、その後も降り注ぐ光を楽しむ日々を送り続けた。
影がかつての敵であったとしても、戦うのではなく、理解し受け入れることでこそ、その存在は彼の支えとなるのだと気づくことができたのだった。

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