「呪われた舞踏会」

夜の訪れと共に、ホールに響く静寂が不気味さを増していく。
そこはかつて、賑やかな舞踏会が催されていた古びたホテルのホールだった。
しかし、今はその華やかさを失い、薄暗い灯りだけがわずかに照らす不気味な空間となっていた。

主人公の鈴木は、友人たちと共に心霊スポットとして有名なこのホテルに肝試しに訪れていた。
彼らは、この場所にまつわる噂を聞きつけて、好奇心に駆られたのだ。
しかし、鈴木はどこか不安を覚えていた。
何かがここに、彼らを待ち受けているような気配がしてならなかった。

ホールの中央には、かつての舞踏会を彷彿とさせる大きなシャンデリアがあった。
鈴木はその周りを歩きながら、友人たちと話していると、一人の女性が現れた。
彼女は白いドレスをまとい、目の前に立ち尽くしていた。
鈴木はその美しい姿に目を奪われたが、同時にその無表情な顔が何かの呪いを感じさせた。

「私はここで、永遠の舞踏を踊っているのです。」彼女の声は、心に響くように鈴木に届いた。

鈴木の友人たちはその女性に近づこうとするが、鈴木は何かを感じ取り、彼らを引き留める。
「離れよう。彼女には近づくな。」なんとか友人たちを制止し、鈴木はその女性から目をそらした。

だが、その女性は消え去ることなく、まるで彼らの視線を追っているかのように、静かに微笑んでいた。
鈴木は動悸が激しくなり、恐怖に飲み込まれそうだった。
「一緒に踊りませんか?」と彼女は再び囁く。
鈴木は拒否するが、他の友人たちはその魅力から逃れられず、一人また一人と彼女のもとへ向かってしまう。

鈴木は大声で友人たちを呼び返そうとしたが、彼らの目はすでに陶酔し、無言で踊りだした。
鈴木は後ずさりし、ホールの隅へと退避する。
すると、鈴木の耳元にはかすかなささやきが響いた。
「彼らはもう戻れない…」

恐ろしさに身をすくめ、鈴木は走り出した。
そして、急いで出口へと向かうが、扉は重たく閉ざされていた。
彼は部屋の中を彷徨い続け、やがて再びホールへ戻ってしまった。
そこには、すでに友人たちが見えず、ただ女性が一人、浮かぶように舞っていた。

鈴木は恐怖で震えながら、もう一度友人たちを呼ぶ。
「帰ろう!ここから出よう!」しかし、誰も応えなかった。
その美しいが恐ろしい女性は、再び彼に目を向け、皺くちゃの微笑みを浮かべる。
「私と一緒に、永遠に踊りませんか?」

鈴木は決してその罠に乗るまいと考え、さらに後ずさりした。
焦りと恐怖で心臓が高鳴る中、そんな彼を見て女性が笑みを浮かべ、その優雅な手を差し伸べた。
その瞬間、舞踏会のような音楽がどこからともなく響き渡り、鈴木は何かに引き寄せられるように、足が動いてしまった。

途端に、鈴木の目の前にはかつての友人たちが浮かんでいた。
彼らは呆然とした表情を浮かべ、何かに囚われているように見えた。
鈴木の心は絶望に満ち、最後の力を振り絞ってその場から逃げ出そうとする。
しかし、過去の美しさに魅せられ、決して逃れられない呪いが、彼を待っていたのだった。

彼は女性の方へ近づくことはできなかったが、友人たちを助けることもできず、ただその場から離れようとした。
しかし、どんなに進んでも道は続かず、結局は同じ場所に戻ってしまうのだった。

「ああ、もう踊りたくない。どうかお許しを…」と呟いたその瞬間、鈴木は過去の影に囚われ、友人たちと共に、その美しい女性の呪縛に捕らわれる運命へと引き込まれていった。
彼の声は、薄暗いホールの中で消えていき、夜は静寂を取り戻す。
どこか遠くで、かつての舞踏会の音楽が響き続けていた。

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