「呪われた美の影」

古い村には、かつて悪名高い呪いが伝わる神社があった。
その神社は、人々が恐れる「裏神社」と呼ばれ、誰も近づこうとはしなかった。
村では、昔からこの神社に関する噂が絶えず、特に若い女性が失踪する事件が相次いだため、村人たちは警戒心を強めていた。

ある夏の晩、村に住む少女、奈々は、友人たちと共に神社の近くに遊びに行くことにした。
彼女たちは「裏神社」のことなどまるで気にせず、ただの肝試しとしか考えていなかった。
月明かりの中、彼女たちは神社の前に立った。
古びた石灯籠が立ち並び、不気味な風が吹き抜ける。
彼女たちは、好奇心に満ちて中に足を踏み入れた。

神社の中は薄暗く、静寂に包まれていた。
奈々は神社の奥にある祭壇を見つけ、何かの気配を感じた。
その瞬間、友人の一人が床に散らばる古びた紙片を見つけた。
それは神社の歴史を綴った文書で、呪いに関する内容が書かれていた。
それによれば、裏神社では、裏切りや嫉妬の念を抱いた者が呪われるとされ、その者の代わりに別の存在が影響を受けるという。

奈々はその呪いの内容に興味を引かれたが、心の片隅に不安が渦巻いた。
彼女はそれを無視してもう一歩進んだ。
しかし、友人たちは不安を感じ、誰も進むことをためらっていた。
すると、ふと後ろから声が聞こえた。

「その神社には近づかない方がいい。」

振り返ると、そこには村で一番の美しさを誇る恩田が立っていた。
彼女は村人たちから神のように崇められていたが、奈々は彼女に嫉妬を抱いていた。
恩田は困惑した面持ちで奈々を見つめ、無言で立ち去っていった。

奈々は、恩田の美しさが自分を圧倒し、心の内に小さな海のような嫉妬を抱くのを感じた。
彼女は呪いの話を思い出し、その怨念が自分の中に芽生えたと感じた瞬間、神社の空気が変わった。
周囲が急に冷たく、背筋にぞくっとするような恐怖感が走ったのだ。

その夜の夢の中で、奈々は再び恩田に遭遇した。
彼女はその美しさに変わらず心引かれるが、どこか不気味な笑みを浮かべていた。
恩田はこうささやいた。

「嫉妬は毒。それを抱くことが、あなたを呪うのよ。」

奈々は目を覚まし、目の前には小さな鏡があった。
そこには彼女自身の顔が映っていたが、どこか異様に暗く、彼女の中の嫉妬の影が映し出されていた。
彼女は神社の呪いを思い出し、その恐怖に駆られながらも、恩田に嫉妬を抱く自分を否定できなかった。

数日後、村で再び失踪事件が起こった。
恩田が姿を消してしまったのだ。
村人たちは混乱し、彼女を探し回ったが、奈々は内心安堵するのを感じていた。
自分の心の中に残る嫉妬の感情が、解消されたかのように思えたからだ。

しかし、その夜、奈々は再び夢の中で恩田に出会った。
彼女の周囲には不気味な闇が広がっていた。
恩田は冷たい笑いを浮かべつつ、奈々に告げた。

「あなたが私を消したと思っているの? けれど、嫉妬は消えない。私の影があなたの中に宿る限り、私はあなたを縛り続ける。」

奈々はその言葉に恐怖を覚えた。
目が覚めた時、彼女は体が重く感じ、まるで何かに束縛されているようだった。
彼女は鏡を見ると、目は虚ろで、恩田の影がちらついているのを感じた。

数ヶ月後、奈々は村の誰からも忘れられていく存在になっていった。
彼女の心の中には、嫉妬の影が暗く根を下ろし、恩田の姿が常に彼女を見つめ続けていた。
村の出口近くには、次第に噂が立つようになった。

「彼女は呪われている」と。
真正面には、裏神社の奥深く、嫉妬の呪いが今も生き続けていることを。
奈々はいつしか忘れ去られ、誰の目にも映らない存在になっていったのだった。

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