静かな田舎町に、古びた神社があった。
その神社は誰も訪れなくなって久しく、周囲は鬱蒼とした木々に囲まれ、薄暗い雰囲気が漂っていた。
しかし、神社の境内には一つだけ、異様に明るく輝く石があった。
そしてその石には、町に伝わる忌まわしい言い伝えがあった。
数年前、村で起きた不可解な事件が発端で、その神社は「呪われた場所」として避けられるようになった。
村の若者たちは、誰もが神社の前を通るのをためらうようになったが、時折不思議な光を見る者もいた。
それを見た者は、言い伝えにより、必ずどこかで家族を失ってしまうのだという。
秋の終わり、大学生のナオトは、友人たちと肝試しをすることになった。
彼らはその神社に挑むことを決意したのだった。
「どうせ都市伝説だろ。怖がりは誰だ!」ナオトは言った。
他の友人たちもその言葉に乗せられて、彼は神社に向かうことになった。
夜の闇に包まれた神社に足を踏み入れると、まるで時間が止まったかのような静寂が広がっていた。
そして、その中心に立つ石は微かな光を放っていた。
ナオトはその光が不気味に思えたが、仲間たちに背中を押されるように、さらに進んでいった。
突然、彼の目の前に一人の少女が現れた。
その子は赤い着物を着ており、煤けた白い顔でナオトを見つめている。
驚いたナオトは後ずさり、「おい、誰だ?」と声を上げた。
すると少女は静かに笑いながら答える。
「私の名前はユミ。あなたと遊びたいの。」
不気味さを感じたナオトは、仲間たちに目を向けたが、彼らの姿は消えていた。
「え?みんな、どこにいるの?」焦るナオト。
だがユミは再び笑みを浮かべて言った。
「光を守るためには、いくつかのルールがあるの。」
ナオトは混乱した。
少女は続けた。
「あなたは私に何かしてくれなければなりません。」その言葉に嫌な予感がした。
「何をすればいい?」とナオトが聞くと、ユミは静かに指を差した。
「この石を持ち帰り、あなたの家族を守って。」
ナオトは心の奥に潜む恐怖が膨れ上がってきた。
しかし、彼はその場から逃げ出すことはできなかった。
目の前の光に魅了され、自ら足を運んでいるのを感じる。
少女の言葉は心に響き、呪縛のように瓶詰めされた自分がそこにいるかのようだった。
「光を守るためには、犠牲が必要。」ユミのその台詞が頭の中で響いていく。
「嫌だ、絶対にそんなことはできない!」ナオトは叫んだ。
しかし、振り返ると、神社の境内はもう見慣れた風景ではなかった。
どこからともなく現れた影が、彼の周りを囲み始めた。
「あなたが選ばれた理由を知らないの?あなたの、家族を選ぶ者になるのよ。」
その瞬間、ナオトは決意した。
恐怖に立ち向かう覚悟を持ち、ユミに向き直った。
「私はあなたの言うことには従わない。家族を犠牲にだなんて絶対に無理だ!」崩れ落ちる心の中で、彼は叫んだ。
すると影たちは、まるで彼の声が届いたかのように一瞬消えた。
しかし、目の前の少女は笑顔を崩さずに立ったままだった。
「あなたが誓った言葉は、人々を会話させる。現実に帰りたいなら、あなたは光を守らなければならない。さもなければ、あなたの家族が呪われる。」
混乱する中、ナオトは自分の家族の顔を思い浮かべた。
彼の心が何かに囚われていく。
その時、彼は気づいた。
彼自身が呪いの真実を知る者として選ばれていることを。
そして、その光は、失われた者たちの未来を守るものだった。
だが彼は心の奥底にある恐怖を振り払えず、最後の瞬間、すべてが明るみに照らされていく感覚があった。
目を閉じた彼は、ユミが近づく足音を感じながら、どこか遠くの世界に引き込まれていった。