美しい緑に囲まれた公園は、町の喧騒を離れた静謐な場所だった。
子供たちの笑い声が響く中、一人の女性、鈴木真美はその園の隅で静かに座っていた。
彼女はいつもこの場所で、自分の願いを込めた小さな石を庭に置いては、望んでいることが叶うよう祈っていた。
自分の望みは、誰もが平和に暮らせる社会であり、特に幼い子どもたちが笑って過ごせることだった。
しかし、彼女が知らぬ間に「望むこと」が彼女を危険な目にさらすことになるとも知らなかった。
ある日、真美はいつものようにその場所で石を置いていた。
すると、ふと気づくと、目の前に小さな屋が現れていた。
その屋は古びたもので、屋根は緑の苔に覆われ、木はところどころ腐食していた。
何か不気味な雰囲気をまとっている。
真美は一瞬、立ちすくんだが、好奇心が勝り近づいてみることにした。
屋の中に入ると、薄暗い空間が広がっていた。
どこか冷えた空気が漂い、真美は寒気を感じた。
その中で、彼女は一つの鏡に目を奪われた。
鏡は古びていたが、何か不思議な力を秘めているように思えた。
彼女はその鏡に触れようとした瞬間、目の前に奇妙な影が現れた。
それは、思いもよらない形をした存在だった。
「望みを聞き届けよう、鈴木真美。」
その声は冷たく、まるで夜の風がささやくように響いた。
真美は恐怖に駆られたが、同時に引き寄せられた。
彼女は恐る恐る、「お願いします、みんなが幸せになれますように」と願いを込めた。
しかし、影は笑みを浮かべるところが見えた。
「あなたの望みは重い。私に求める名のない呪いをかける覚悟があるか?」
真美は恐れを感じながらも、子供たちのために、そして自分のために、その呪いを受け入れる決心をした。
「はい…受け入れる覚悟があります」と言い放った。
影は一瞬静まりかえり、そして「目には目を、望みに望みを。代償を支払う覚悟を持て」と告げた。
真美はその言葉の意味が分からなかったが、心のどこかで何かが結びつく感覚を覚えた。
恐れとは裏腹に、彼女は影の存在に強い興味をもっていた。
この出来事が何か特別な力を持っていると感じたからだ。
果たして彼女は、平和を願う心を呪いで代償することになった。
日々が過ぎるにつれ、真美の周囲では奇妙な出来事が起こり始めた。
彼女が願った通り、人々はそれぞれの幸せを見つけ、それによって彼女が望んだ世界が少しずつ実現し始めた。
しかし、その影響の裏には誤った選択の代償があった。
彼女の周囲の人々が幸せになるにつれ、真美は次第に自分の人生が蝕まれていることに気づく。
彼女の目に映る日常は、何か欠けた存在のようになり、深い孤独感を抱えるようになった。
ついに、刺すような痛みが彼女の中に込み上げる。
望みが実現するたび、それがどれほどの代償を伴うのかを思い知らされることになる。
彼女は、自分の人生が呪われているかのように感じ始めた。
ある晩、真美は再びあの屋に足を運ぶ決心をした。
薄暗い中で影が姿を現し、「赤い代償はまだ支払われていない。お前の目の前で、望む者は何をもたらすのか。」と言った。
真美は影を見つめ、「私は、もう一度、私の生を返してほしい」と叫んだ。
影は無言で彼女を見つめ、彼女の心に刻まれた呪いの力を試すような微笑を浮かべた。
「それは容易いことではない。覚悟を決めなければ、二度と戻れないのだぞ。」
その瞬間、真美は自分の選択によって、もう戻れない運命を背負っていることを痛感した。
彼女は勇気を振り絞り、深い息をついて言った。
「私の望みを叶えてくれるのなら、その代償は一切受け入れます。」
彼女の意志に影はゆっくりと頷いた。
それを合図に、古びた屋は静かに崩れ去り、真美の目の前には漆黒の闇が広がった。
そして、彼女の心は、運命の呪いと向き合う新たな旅へと踏み出していた。