「呪われた味の行方」

田舎の小さな村には、古くから語り継がれている「呪いの料理」の噂があった。
村の外れに位置する味屋、そこに伝わるレシピには、不思議な力が宿っていると言われていた。
誰もが一度はその料理を食べてみたいと思うが、しかし、その裏には恐ろしい真実が隠されていた。

主人公の高橋は、アウトドア好きで冒険心旺盛な大学生だった。
ある日、友人たちと一緒に村を訪れ、地元の伝説を聞いた。
そして、「味屋」の料理が実在することを知り、興味を持った。
高橋は仲間たちと共に、その料理を食べに行くことを決める。

村に着くと、彼らは薄暗い店に入った。
店内は古びた雰囲気が漂い、壁には沢山の料理の写真が貼られていた。
メニューは一つだけ、「たまごの呪(しつ)料理」。
店主のおばあさんが、ニヤリと笑いながら、その料理を薦めた。
料理を注文すると、待つこと数分。
香ばしい香りと共に一皿の料理が運ばれてきた。
それは、美味しそうに見えたが、どこか異様な形をしていた。

高橋は仲間たちと共に、その料理を口にした。
瞬間、味覚が研ぎ澄まされ、まるで自分の舌に真の味が宿ったかのように感じた。
だが、次の瞬間、彼の体が震え始めた。
周囲の明かりがほんのりと暗くなり、村の静寂が異様な沈黙に変わった。
彼の頭の中には呪いの言葉が響き始めた。
「な、真の味を知る者に呪いは無情だ」と。

仲間たちは混乱し、高橋はその場から逃げ出そうとした。
しかし、足が重くて動けなかった。
その時、店主のおばあさんの声が彼を呼び止めた。
「呪いは、味を知る者を選ぶのじゃ。お前の心の奥に秘めた欲求が、今、呪いに変わるのじゃ」。
高橋は彼女の言葉を理解できなかった。
自分だけが取り残され、周囲は幻覚に包まれているようだった。

高橋は、次第に自分が何もかも失っていく様子を見せられた。
大切なものや、愛する人たちとの思い出が、一つ一つ消えていく。
彼の心がまるで飢えていくようだった。
周囲の空間が歪み、高橋はこの呪いから逃れるために、必死で自分を取り戻そうとした。
自分の存在を確かめるために、「味わってはいけない」と何度も自らに言い聞かせた。

しかし、その呪いの力は強く、彼が逃げようとすればするほど、呪いは深く彼の心に根を下ろしていった。
高橋は、次第に恐怖にとらわれ、心の奥で何かが砕けていく感覚を覚えた。
彼はもう、普通の人間として生きていられないと感じ始めた。
「真の意味での味を知ることは、こんなにも苦しいのか」と。

やがて、彼は完全に没入してしまった。
高橋の目の前には、何もかもが響き渡る空間が広がり、同時に店主のおばあさんの姿が不気味に揺らいでいた。
彼女は高橋を見つめ、薄ら笑みを浮かべて言った。
「お前は、真の呪いを受け入れる準備ができたのじゃな。これからは、この料理が意識となって、お前の心を支配するのじゃ」

高橋は、意識が遠のき、心が真の味を求め続けた。
彼の体は呪いの料理に完全に染まってしまった。
数日後、彼は村の仲間たちと共に姿を消した。
「味屋」の奥にあった不気味な真実は、今も村の中に残り、「たまごの呪料理」は、永遠に食者を待ち続けているのだという。

タイトルとURLをコピーしました