「呪われた古道の影」

昔々、静かな山村に小さな家がひっそりと立っていた。
その家に住むのは、田中健太郎という40代の男だった。
健太郎はこの地方に住む地元の人々から、特に目立った存在ではなかった。
しかし、彼の家には、村の人々が恐れる不思議な現象が住み着いていた。

その村には「古い道」という名の道が存在した。
この道は村の外れに続いており、誰もがその道を歩くことを避けていた。
古い道を進むと、目に見えない何かが経を隔て、心の奥を探り出すような気配を感じるからだ。
村の人々はその道を「呪われた道」と呼び、決して近づくことはなかった。

ある日、健太郎はふとしたきっかけで古い道に足を運ぶことになった。
彼は特に悪い予感を持っていたわけではないが、村の噂に興味を抱いていた。
ある種の好奇心が彼を駆り立てたのだ。
古い道を進むにつれて、健太郎は静かな不安を覚え始めた。
周囲はひっそりと静まり返り、風さえも影を潜めているかのようだった。

道の途中には、古びた神社があった。
荒れた境内には雑草が生え放題で、誰も管理する者はいなかった。
健太郎はその神社の中に引き寄せられるように足を進めた。
しかし、そこで彼が見たものは、常人の理解を超えた恐ろしい光景だった。
神社の中央に祀られた石像は、まるで生き物のように動いているかのように見えたのだ。

その瞬間、急に周囲の空気が重くなり、彼の心に押し寄せるような恐怖感が襲った。
彼は耳元でかすかな囁きを聞いた。
「戻れ…。戻れ…。お前の居場所はここではない。」その声は冷たく、彼の心に深い影を落とした。
身体が動かず、恐怖に凍りついてしまった。

その後、健太郎は無意識のうちに神社の奥へと進んでいった。
暗い神社の隅には、古い経の書物が積み重ねられていた。
近づいてみると、経文は既に朽ち果て、読解できないほどにぼろぼろになっていた。
しかし、彼はその時、何かが彼を引き寄せるかのように感じた。
この経が、村の人々が恐れているものの正体に関わっているのではないかと考えた。

直感に反して彼は経の書物を手に取り、読もうとした。
音もなく空気が振動し、不可思議な力が彼の周囲を包んだ。
すると、目の前に過去の村人たちの姿が現れた。
彼らは無表情で、周囲の空間に溶け込むように動いていた。
彼はその村人たちが、呪われた古い道に足を運び、行き場を失ってしまった者たちだと気づいた。

恐怖に満ちた声が彼の耳に再び響いた。
「戻れ…。お前も仲間になるのか?」その瞬間、健太郎は自らの意志を振り絞り、神社を飛び出した。
足元はふらふらとし、心臓は猛烈な速度で鼓動している。
彼は今まで感じたことのない恐怖に襲われながら、何とか古い道を抜け出すことができた。

村へ戻り、健太郎はこの経験を一人ひとりの村人に語った。
しかし、その時にはもう手遅れだった。
健太郎が神社に足を運んだことで、村に暗い影が差し込み、次々と人々が姿を消していく恐ろしい現象が始まった。

村の人々は彼の語った事実を信じ、古い道には決して近づかないように気をつけたが、すでに罠にはまってしまった村人たちは戻る道を失っていた。
今、健太郎はその村で一人、心に影を抱えながら、再び村の人々が笑顔で過ごせる日を夢見続けている。
おそらく彼は、古い道に潜む恐怖の存在と向き合うことを諦めることができないのだろう。

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