「呪いの音が響く神社」

村の奥にひっそりと佇む神社は、長い間忘れ去られた存在だった。
人々はこの神社を避け、近づくことすらなかった。
それは、そこに伝わる忌まわしい噂が原因であった。
村人たちは、特に音に対する異常な恐れを抱いていた。
この神社の近くでは、「呪いの音」が聞こえると言われ、その音に耳を傾けた者は、二度と元の生活に戻れないというのだ。

ある日、大学生の太郎は友人の美咲と共に、この神社を訪れることにした。
彼らは心霊スポット探訪を趣味としており、あまりにも好奇心が強すぎるあまり、噂を軽視していた。
「怖い話なんて、所詮は伝説だろ。行ってみようよ」と太郎は言い、美咲も共に足を踏み入れることにした。

神社に近づくにつれ、不気味な空気が漂ってきた。
風が吹くたびに、周囲の木々がざわめき、まるで彼らを警告するかのようだった。
太郎はそれを無視し、神社の鳥居をくぐった。
境内では、古びた石の灯籠が転げ回り、その周りに生えた雑草が静かに揺れる。
二人は静まり返った空気の中、古い社殿を見つめた。

「何か…音がしない?」美咲が囁いた瞬間、彼らの耳に「耳鳴り」のような囁きが響いた。
まるで、誰かが非常に遠くから彼らを呼んでいるような、不気味な調子だった。
それは徐々に大きくなり、まるで何かが近づいてくるような感覚が襲ってきた。

「大丈夫だよ、ただの風の音だろ」と太郎は言ったが、心の中では何かが引っかかっていた。
彼らは辺りを見渡し、その音の正体を探ろうとしたが、音は明確にならず、ただ耳の奥に残り続けた。

次第に、神社の闇は深くなっていき、太郎と美咲の背後からは冷たい風が吹き抜けた。
その瞬間、太郎の目の前に、かすかに人影が現れた。
彼は思わず目を凝らしたが、その影はすぐに霧のように消えてしまう。
そして、再び音が大きくなり、今度ははっきりとした声に変わった。
「戻れ、戻れ…」

恐怖が彼の心を締め付けた。
美咲もその声を聞いたようで、彼女は震えながら言った。
「太郎、もう帰ろうよ…」だが、太郎はこのままでは帰れないという意地を持ち、神社の奥へと進み始めた。
「何かあるはずだ。もっと調べてみよう」と彼は言ったが、美咲はその言葉に反応せず、ただ後ろで震えていた。

神社の中に入ると、薄暗いランタンが一つだけ点っていた。
それが、神社の奥深くからかすかに漏れ出る光だった。
二人はその灯りに惹かれるように近づき、次第にその光が明るくなるのを感じた。
しかし、その先に待ち構えているものは、決して見たくないものだった。

突然、「呪」が発動したような感覚に襲われ、音が強まった。
「消えろ、消えろ…」その声が永遠に響き渡る。
太郎は振り返ったが、美咲はすでに姿を消していた。
彼は絶望感に包まれながら、無意識に叫んだ。
「美咲!どこにいるんだ!」だが、答えはなく、ただ音が彼の中に響き続ける。

その瞬間、淡い光の中で再びあの人影が現れた。
それは、美咲の姿だったが、彼女の顔はどこか異様な表情を浮かべていた。
「何が起こっているんだ、美咲!」彼は駆け寄ろうとしたが、その瞬間、彼女は再び消えてしまった。
彼がその神社で感じたのは「音」の呪いだけであった。

しばらくして音が消え、静寂が戻った。
太郎はその場に立ち尽くし、どこか遠くで美咲の声が聞こえるような気がした。
振り返っても、もう彼女は戻らない。
神社は再び静寂に包まれ、彼の記憶はその音と共に、永遠に呪われた存在となったのだった。

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