「呪いの道を歩む者たち」

ある村には、古くから「呪いの道」と呼ばれる舗装された道があった。
この道を通ると、決して帰れなくなると言われており、地元の人々はその道を避けていた。
しかし、若い男女の俊介と美咲は、好奇心からその道を試すことに決めた。

俊介と美咲は都会から引っ越してきたばかりで、村の伝説に興味津々だった。
村人から話を聞くうちに、ますますその道を通りたくなってしまったのだ。
現地の人々からは「絶対に行くな」と警告されたが、若い二人にはその言葉が逆に興味をそそった。

彼らはある晩、月明かりが照らす中、呪いの道に足を踏み入れた。
最初は静かで、周囲に響く音は風の音だけだった。
しかし、進むにつれて、何か不気味な気配を感じるようになった。
その道は、まるで二人を拒むかのように、周りの空気を重くしていった。

しばらく歩いていると、突然美咲が立ち止まった。
「感じる…何かがいる」と囁いた。
俊介は少し笑いながら、「怖がるなよ。まだ何も起こっていないじゃないか」と言った。
すると、彼の言葉が響くと同時に、周りの風が強くなり、両側の木々がざわめき始めた。

「ちょっと待って…帰ろう」と美咲が言った瞬間、道の向こうから一人の女性が現れた。
彼女は黒い服を着ており、その姿はまるで霊のようだった。
二人はその女性の目を見つめた。
その目はじっと俊介を見つめ、自分を引き込もうとするような冷たい光を放っていた。

「この道を通る者には、呪をかける」と女性は呟いた。
俊介はその言葉を聞いて恐れおののいたが、何か心の中で自由を求める感情が芽生えた。
「私たちには関係ない」と彼は言い放った。
その瞬間、女性は微笑んだが、その微笑みはどこか怖ろしいものだった。

俊介と美咲は、そのまま道を進むことを決意した。
しかし、瞬時に彼らの周囲の風景は変わり始めた。
道は延々と続き、どこまでも同じ風景が繰り返された。
美咲は恐れを抱いて叫んだ。
「何かおかしい!戻れない!」彼女の言葉通り、どこを見ても見覚えのある景色というのは無かった。

時間が経つにつれて、二人の心には焦りと恐怖が広がっていった。
ふと、彼らの後ろで物音がした。
振り向くと、呪いの女性が近づいてきていた。
「あなたたちはここから出られないわ。呪われた道なのだから」と冷ややかな声で告げた。

俊介は考えた。
どうにかして呪いを解く方法はないのか。
彼は思い出した。
村人の話で、「道の先にある白い花を見つけた者が呪いを解ける」と教えられたことを。
急いで道を進み続けるが、心はどんどん重くなる。

美咲は崩れそうな声で、「もう無理だよ、俊介…!」と泣きついたが、俊介は手を伸ばし、彼女を奮い立たせようとした。
「最後まで諦めない!白い花を見つけるんだ!」二人は再び手を繋ぎ合い、必死で進んだ。

そして、道の奥に突如として、一面に白い花が咲く場所に出た。
二人はその光景に興奮し、急いで花に近づいた。
その時、周りの空気がピリリと張り詰め、呪いの女性の姿が現れた。
「その花を摘んではいけない。呪いがさらに強くなる」と警告した。

しかし、俊介に最後の意地が宿った。
「この呪いを解くのは私たちだ、決して返さない!」と叫び、花を摘んだ瞬間、凄まじい力が周囲を包み込み、その女性は消え去った。

次の瞬間、二人は静かな村の広場に立っていた。
道はまるで夢のようにただの道に戻っており、呪いは解かれたようだった。
美咲は涙を浮かべていたが、俊介はその手に白い花を持っていた。
また、呪いの道へ戻ることは二度とないだろう。
彼らは、新たな始まりを信じながら、一歩ずつ歩き出した。

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