「台の恐怖」

晴れた日の午後、秋田市にある小さな茶道教室で、若い女の子たちが茶道の練習をしていた。
その教室は、古い町家を改装したもので、静かで落ち着いた雰囲気が漂っていた。
教室には、先輩の田中さんと、後輩の佐藤、木村、そして新しく加入した藤井の4人がいた。

ある日、田中さんが教室の片隅で古い台を見つけた。
その台は、木製で、表面には黒いシミが広がっていて、かすかに不気味な雰囲気を醸し出していた。
田中さんは、その台が気になり、「これ、どこから来たの?」と声に出した。
それを聞いた佐藤が、「もしかしたら、幽霊でも宿っているのかも」と冗談半分で言った。

その日の練習が終わり、みんなが帰る準備をしていると、急に教室の灯りがちらつき始めた。
全員が驚き、田中さんは怖がる後輩たちを励ましながら、灯りを消して外に出ようとした。
その時、藤井が「この台、ちょっと触ってみてもいいですか?」と言った。
好奇心が勝ったのか、彼女はその台に手を伸ばした。

触れた瞬間、台から冷たい気が放たれ、藤井の手が震えた。
彼女は驚いてその手を引っ込め、「なんか変だ、これ」と言った。
田中さんは不安に感じながらも、「触らない方がいいんじゃない?」と警告した。
しかし、藤井はもう一度台に触れると、今度はそのシミが脈打つように動くのを見た。

その夜、藤井は不気味な夢を見た。
夢の中で、彼女は台の前に立っており、台の上には白い布がかけられていた。
布をめくると、そこには無数の顔が浮かび上がり、彼女に向かって「助けて…助けて…」と囁いていた。
藤井は恐怖で目が覚めたものの、何が現実なのかわからなかった。

翌日、教室でこの夢について話していると、他の三人も似たような夢を見ていたことがわかった。
特に佐藤は、自分の夢の中でもその台の前に立っており、何かを引き寄せられる感覚に苦しんでいた。
彼女たちは、気のせいだと思おうと努力したが、何か不気味なものが彼女たちに迫っている感覚は拭えなかった。

数日後、教室での練習中、突然台の上に一枚の古い茶碗が出現した。
その茶碗はまるで誰かが置いたかのように、台の真ん中にピタリと収まっていた。
驚いた彼女たちは、その茶碗を手に取ることができず、ただ黙って見つめるしかなかった。
そして、その茶碗には、あの夢の中に出てきた顔の一つが描かれているのを見つけた。

田中さんが言った。
「これ、私たちを何か意味があるものとして選んだのかもしれない。もしかしたら、この茶碗は私たちを試すために現れたのかも…」それを聞いて、藤井は心臓が高鳴った。
「試すって…どういうこと?」

その瞬間、教室の空気が変わった。
重い気が部屋の中を包み込み、先輩たちの表情も険しくなった。
佐藤が突如、口を開いた。
「私たち、何かを決断しなければならないのかも。台に触れたことで、私たちの未来がこの場所と結びついたのかもしれない。」すると木村が続けた。
「あの夢の中の声は、助けを求めていた気がする。何か、私たちに訴えかけているのかも…」

不安を抱えながらも、彼女たちはその茶碗をどうするべきか話し合った。
結局、彼女たちはその茶碗を持ち帰り、一緒にお茶を入れて、供養することに決めた。
みんなで座ってお茶を楽しむことで、少しでもその台の怨念を解きほぐそうと試みた。

茶を飲み干す頃、空気が軽くなり、次第に不気味な感覚が薄れていくのを感じた。
安堵を覚える彼女たちの顔には、笑顔が戻ってきた。
台から放たれる冷たい気は、次第に彼女たちの心を解放していったのだ。

それからしばらく、教室は平穏を取り戻した。
しかし、その後も決して教室の台には触れてはいけないというルールができた。
教え子たちがその台を通じて触れた不気味な現象は、まるで彼女たちの心の中で静かに息づいているかのようだった。

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