「光の背後に潜む影」

ある静かな町の片隅に、古びた洋館がひっそり佇んでいた。
そこはかつて裕福な家族が住んでいたが、今は誰も住む者はいなかった。
その洋館には、ただ一つの噂が残っている。
「夜になると、光るものを求めている」と言われる、悲しい少女の霊がいるという噂だ。

ある雨の夜、大学生の直樹は友人の健二と共に肝試しをすることにした。
そうだ、あの洋館に行こうと直樹が提案したのだ。
彼は心の片隅にある、不思議な噂に興味を抱いていた。
健二は少々怖がっていたが、直樹の好奇心に負けてついていくことになった。

洋館の前に立つと、不気味な雰囲気が二人を包み込んだ。
外からの微かな光が窓に反射し、古いハーブの匂いが立ち込めていた。
ドアは不気味にきしみながら開き、その瞬間、薄暗い室内に二人は足を踏み入れた。

じっと目を凝らすと、部屋の隅には何かキラキラと光るものがあった。
直樹はその光に惹かれ、足を進めた。
その光はどこか温かみを帯びており、彼の心に安らぎを与えるようだった。
健二は後ろから「やめろ、直樹!」と叫んだが、直樹はその声がどこか遠くに感じられた。

彼が光に近づくと、不意に強い風が吹き抜け、彼はふと足をすくわれた。
光の源は、古いオルゴールだった。
オルゴールは自動的に回り始め、優しげなメロディーが室内に響き渡った。
その瞬間、彼の周りに淡い光が踊り始めた。
それはまるで人の形をしているかのようだった。
直樹は驚きと恐怖を抱えたまま、ただその光を見つめていた。

すると、光の中から一つの影が浮かび上がった。
それは、白いドレスを着た少女の霊だった。
彼女の目は悲しそうに潤み、直樹をじっと見つめていた。
彼はその無言の視線に、胸が締め付けられる思いがした。
彼女の名前は、ここに住んでいたかつての愛を求めているのだろう。
直樹は無意識のうちにその少女の心に感じるものを理解していた。
それは「念」に満ちた切なる願いだった。

「愛して欲しかった、忘れられたくなかった…」と言葉にならない声が、彼の心に響いた。
直樹はあまりの悲しみに心が痛む。
彼女がどんなに寂しかったのか、どんな愛を求めていたのかが、少しずつ明らかになっていく。
そして彼に向けたその視線が、ただの念ではなく、彼の心の奥底に常に存在していた何かを解き放つ気がした。

だが、健二は恐怖のあまり、急いでその場を離れようとしていた。
彼もまた、この場から逃げ出すことでしか対処できないと感じていた。
しかし直樹は、彼女を無視するわけにはいかなかった。
彼は一瞬の躊躇の後、彼女に向かって手を伸ばす。
「君を忘れないよ」と呟くと、彼女は微かに微笑んだように見えた。
そしてその瞬間、彼女の形はだんだんとぼやけて消え、洋館の空気が少し軽くなった。

直樹と健二はそのまま洋館を後にすることにした。
外に出た瞬間、雨が止み、夜空に星々が顔を出した。
あの光は何だったのか、直樹は考えた。
彼女の愛は今もそこで輝き続けているのかもしれない。
彼は深い感慨に包まれながら、何か重要な意味を持つ出来事に出会ったことを感じていた。

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