「光に飲み込まれた者」

ある日、大学生の美咲は、古い図書館の一角にある庫(クリニック)で勉強することにした。
図書館は広々としていて、静けさに包まれている。
周りには誰もおらず、彼女は落ち着いた雰囲気の中で、参考書を開いてページをめくっていた。

その庫は、図書館の一部としてはあまり使われていないようで、ほこりが積もり、時折冷たい空気が流れ込んできた。
しかし、美咲はそのひんやりとした空気が心地よいと感じ、没頭して勉強を続けた。

時間が経つにつれて、薄暗い庫の内部で何かが光り始めた。
美咲は目を細めてその光を見つめた。
それは、一つの古びた書籍の背表紙から漏れ出す微かな光だった。
好奇心に駆られた美咲は、その本を手に取り、ページを開いてみることにした。

「犠牲の光」──その本のタイトルには、不吉な雰囲気が漂っていた。
中には、過去に実際に起こった霊的現象や、犠牲を捧げた者たちの物語が語られていた。
その中には、光が人々を消すという不思議な現象も含まれていた。

美咲はその内容に心を奪われ、ページをめくる手が止まらなかった。
読んでいくうちに、自身の身に何か不吉なことが起こるのではないかという不安が浮かび上がってきたが、興味が勝り、彼女は読み進めた。

突然、庫の中の光が強くなり、美咲は目を眩ませた。
彼女が本から目を離すと、目の前に一人の女性が立っているのに気づいた。
白い着物を着たその女性は、髪が長く、透き通るような肌をしていた。
彼女は静かに美咲を見つめていたが、笑顔はなかった。

「助けて…」女性の声が耳に残る。
美咲はその言葉に驚き、思わず後退した。
「あなたは誰?何が欲しいの?」

「犠牲が必要なの…私を解放してほしい」と、女性は告げた。
美咲は恐怖を感じたが、同時にその女性の言葉に引き寄せられるような感覚もあった。
何かが彼女の中に渦巻いている。

美咲は逃げなければと考えた。
しかし、光が強くなりすぎて、視界がほとんど見えなくなっていく。
彼女はその中で、目の前の女性が気を失っているように見えた。
彼女の存在が、徐々に薄れていく。
まるで、光に飲み込まれるかのようだった。

「消えないで…!」美咲は思わず叫んだ。
だが、女性はそのまま光の中に溶け込み、消えてしまった。
美咲は心臓が高鳴り、恐怖に襲われた。

気がつくと、庫は静寂に包まれていた。
まるで何事も起きなかったかのように、静まり返っている。
美咲は息を整え、頭の中で起こったことを整理しようとしたが、恐ろしい記憶が蘇ってくる。

その日以来、美咲は時折、図書館に行く夢を見る。
夢の中で、彼女は女性が再び現れるのを待ち続けている。
そして、女性は毎回異なる表情をしているが、ただ一つ共通するのは「私を助けて」の言葉。
夢から覚めた後も、その声が耳の奥に響いている。

彼女は次第に症状に悩まされるようになり、勉強に集中できなくなった。
図書館の庫が持つ不気味な魅力に引き寄せられ、その中で何かを解決したいという衝動が日に日に強まっていった。

もう一度、あの場所に行かなければならない。
美咲は自分の心にそう決めていた。
彼女は、何が起こるのかを確かめるために、再び庫を訪れることを決意した。
しかし、その時、彼女を待っているのは、光の先に隠されている真実だったのかもしれない。
要するに、犠牲を捧げることでしか得られない何かが、彼女を待っていたのだ。

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