深い森に囲まれた小さな村に、ひっそりと佇む古びた家があった。
その家は、村の人々にとって忌まわしい存在で、近寄る者は誰もいなかった。
家の周りには雑草が生い茂り、蔦が壁を覆い尽くしていた。
誰も手を加えないその家は、まるで時間が止まっているかのようだった。
ある秋の夜、村に若い男性が現れた。
彼の名は彰。
都会から村に越してきた彼は、村の人々が語るその家の噂に興味を持った。
一見して普通の家に見えたが、その外観や周囲の様子からは、不気味な雰囲気が漂っていた。
好奇心が勝った彰は、「徹底的に調べてやる」と決意し、その家へと足を運んだ。
その晩、彼は薄暗い家に足を踏み入れた。
中は埃だらけで、家具はほとんど朽ち果てていた。
壁には古い写真が飾られており、それはかつてこの家に住んでいた誰かの笑顔を映し出していた。
しかし、その笑顔はどこか不自然で、見る者に不安感を与えるものだった。
彰は家の奥へと進むにつれて、異様な気配を感じ始めた。
静寂が支配する中、突然、光が不意に灯った。
振り返ると、家の廊下にある灯りが点滅していた。
彼は驚きつつも、何かの呪縛を感じ取りながら、それに誘われるように廊下を進んだ。
その瞬間、彼は不気味な声を聞いた。
「助けて…」という囁き。
その声は、まるで誰かが彼に向かって訴えかけているようだった。
彰は背筋が凍りつく思いで、その声の主を探し始めた。
声は廊下の奥、暗闇の中から続いているようだった。
彼が声の方向に近づくと、突然、目の前の部屋のドアがひとりでに開いた。
奥の部屋は薄暗く、床には古びたカーペットが敷かれていた。
部屋の中心には、かつての住人の姿が現れた。
彼女は青白い光に包まれ、無表情でこちらを見つめている。
彰は心臓が高鳴るのを感じながら、その女性と目が合った。
「あなたは、どうしてここに?」彼女の声は冷たく響いた。
彰はその質問に答える間もなく、背後の壁に意識が引き寄せられたかのように感じた。
そして、彼女の目の奥に潜む悲しみを理解したとき、彼はそれが何か得体の知れないものであることに気付いた。
「私を、この家から解放して…」その瞬間、彼女の周りの光が強まった。
しかし、彰は恐れと驚きから動けずにいた。
すると、その光は突如として消え、まるで彼女の存在が消え去ったかのように感じられた。
部屋は再び静寂に包まれ、ただ冷たい風が吹き抜けるだけだった。
彰は急いでその場を離れ、家から外へ飛び出した。
恐怖と興奮が交錯する中、彼は今しがた見た異様な光景を振り払おうとした。
しかし、その瞬間、再び「助けて…」という声が耳に残った。
彼はそれからというもの、村人たちが語っていた忌まわしい噂の真相にたどり着いてしまったのかもしれない。
その後、彰は村に留まることなく、町へ戻った。
彼の心に焼き付いたのは、あの青白い光と、悲しみに満ちた女性の目だった。
しかし村の人々は、彼の話を信じることはなく、さらに不気味なハナシとして語り継がれることになった。
人々は結局、家の存在を忘れようとしても、そこに潜む真実は彼らを包み込んでいたのかもしれない。