ある静かな村、村のはずれに立つ古びた屋敷がありました。
その屋敷は長い間、誰の目にも触れられることなく、朽ち果てていく運命にありました。
おばあさんの話によれば、その屋敷には「ゆう」という名前の青年が居たというのです。
彼は村の誰とも交流せず、ひっそりと暮らしていました。
村人たちは彼を恐れ、近づく者はいませんでしたが、彼には一つの特異な才能がありました。
人の気持ちを読み取ることができる能力です。
ある日、村の若者たちが「ゆう」の屋敷を探検することを決意しました。
彼らは好奇心に駆られ、何が起こるのか試してみようとしました。
中でも勇敢な「たくま」と「まり」は、屋敷の中に踏み込むことを決めました。
二人は夜の闇に包まれた屋敷のドアを開け、ほの暗い内部へ進みました。
屋敷の中は静まりかえり、薄暗い廊下に足音が響きます。
すると、ふいに「ゆう」の声が聞こえてきました。
「なぜ来たのだ？」その声は低く、冷たいものでした。
「たくま」と「まり」は驚き、怯えながらも進み続けました。
彼らはゆっくりと一つの部屋に入ると、背後からまた「ゆう」が現れました。
「この屋敷には、償わなければならないものがある」彼の言葉はまるで重く、部屋の空気を変えました。
「償い？何を？」と「まり」が尋ねると、「ゆう」は静かに目を伏せました。
「かつて、私はこの村に大きな災いをもたらした。もう一度、悪しきことを起こす前に、私はこの場所から出ねばならない。」
「たくま」と「まり」は彼の言葉に耳を傾け、何かが恐ろしいまでに真実であることを感じ取ります。
彼はまだ自分の心の奥底に、村人に対する申し訳なさを抱えているようでした。
その時、屋敷の中が不気味な声に包まれ、冷気が2人を襲いました。
屋敷の壁が震え、何かが目覚めたのです。
「ゆう」は慌てて「出て行け！」と叫びました。
二人はただ恐怖に駆られ、後ろに下がり、屋敷を逃げ出しました。
外に出た瞬間、村に帰ることを約束します。
しかし、その夜、村では異変が起こりました。
誰もが不安に包まれ、心に暗雲が立ち込めるのを感じていました。
「たくま」と「まり」は再び屋敷へ向かい、「ゆう」との再会を試みました。
しかし、屋敷はもうそこにはなく、ただの無明な闇だけが広がっていました。
次の日、村人たちの夢には「ゆう」が現れました。
彼は「償いの時間が迫っている」と告げ、村を守るために自らの命を差し出す必要があると語りました。
村人たちは彼に感謝し、償いをすることを誓いました。
その後村の人々は、「ゆう」のために、彼の名を語り継ぎ、何か特別なことを行い続けました。
村は次第に平和を取り戻し、しかし「ゆう」の存在は今も誰の心の中に根付いているのです。
彼の言葉は、その後何度も繰り返され、村への警告として語られています。
今でも、あの屋敷の跡地には、彼が償い続ける姿が見えるという者もいるのです。
