ある小さな村の外れに、母親と二人三脚で暮らす一人の子供、翔太がいた。
翔太は、村の仲間たちと遊ぶことが大好きな明るい子だったが、彼には一つだけ秘密があった。
それは、自分の周りで起こる「偽の存在」について、誰にも話せないことだった。
翔太が村の近くの森で遊んでいたある日、彼は不思議な木の下で小さな生き物を見つけた。
それは、色とりどりの羽を持つ小さな妖精のようなもので、彼の目を引いた。
翔太はその生き物に近づき、興味津々で話しかけた。
「君は誰なの?」
生き物は柔らかな声で答えた。
「私は、この村の夢を守る者。だけど、最近は夢が偽りの夢に変わってしまっている。」
翔太はその言葉に戸惑った。
「偽りの夢?どういうこと?」
「村人たちは、現実を忘れてしまう夢を見続けている。その影響で、彼らの心は次第に偽りの幸せに覆われてしまっているの。」生き物は翔太の目を真っ直ぐに見つめた。
翔太は心の中で不安を感じつつも、目の前の生き物に引き寄せられた。
「どうしたら、嘘の夢から目覚められるの?」彼は生き物に尋ねた。
「真実を知ること。それが大切よ。君はこの村の一員として、村人たちに彼らの本当の姿を教えてあげて。気づくことから始めなくちゃいけない。」
その日から、翔太は村の仲間たちに「本当の夢」を取り戻すため、様々な行動を起こした。
けれど、彼の言葉は誰にも届かず、村人たちは彼の話を笑い飛ばすだけだった。
日々が過ぎるにつれ、翔太は孤独感に苛まれ、心が折れそうになっていた。
彼が語る「本当の夢」には、誰も興味を示さなかったからだ。
そして、村の人々は彼を排除するようになり、「翔太はいつも独りよがりだ」と噂されるようになった。
ある晩、翔太は再びあの木の下に行くことにした。
すると、不思議な生き物が待っていた。
「翔太、あなたは頑張ったわね。でも、村の人々は本当にその夢を手放したくないの。」
「どうすればいいの?私はみんなのために進みたいのに」と翔太は懇願した。
「時には、真実を見せるために痛みを伴うこともある。あなたには、彼らが偽りの夢に浸ることでどんなに苦しむのか見せる使命がある」と生き物は言った。
ある日の夜、翔太は村の夢の中に入り込み、人々に「本当の姿」を見せることを決意した。
彼は、無理やり彼らの夢の中に入って、彼らが自分たちの虚構に囚われている姿を見せた。
寝ている間に、彼は村の景色を暗い影に変え、希望の光を打ち消した。
翌朝、村人たちは目覚めると、その夢の続きが自分たちを飲み込んでいることを感じた。
突然、村中に不安が広がり、翔太の表情を思い出す。
そして、村人たちは初めて翔太の言葉を理解し始めた。
「本当の夢」とは、偽りを手放すことだったのだ。
しかし、その代償は大きかった。
村人たちは、翔太に感謝する一方、彼の存在が夢を侵食するものであったと非難した。
翔太は孤立し、あの小さな生き物の言葉がいつのまにか自分を狙っていることに気づいた。
村全体が翔太を恐れ、彼を追放する決意を固めた。
彼は「実」の名のもとに置かれた影となり、村の外れに一人きりで生きることになった。
こうして、人々は偽りの夢の中で幸せを感じることを選び、翔太は孤独な影として村のことを見守ることになった。
彼の心は、他者を助けるための希望を失い、静かにその痛みを抱え続けていた。