彼の名前は田中直樹。
直樹は、大学での忙しい学生生活を送る一方で、友人たちと楽しむ時間を心待ちにしていた。
ある日、友人の松本翔が不思議な話を持ち込んできた。
「最近、教室の裏にある古い倉庫がヤバいんだ。行ってみない?」直樹は興味をそそられ、他の友人たちと共にその倉庫を訪れることにした。
倉庫は大学のキャンパスの片隅に、薄暗く佇んでいた。
周囲は静まり返り、まるで時が止まったかのようだった。
直樹たちはその扉を開き、薄暗い空間に足を踏み入れた。
そこには、かつて使われていたであろう様々な物が散乱しており、埃まみれの机や椅子が無造作に置かれていた。
「こんなところに隠れた秘密があるのかな?」翔の言葉に、仲間たちは期待を寄せた。
しかし、倉庫の奥へ進むにつれて、どこか不穏な空気が漂い始める。
突然、直樹の後ろから微かな声が聞こえた。
「助けて…」思わず振り向くと、誰もいないはずの空間に人影が見えた気がした。
「どうしたの、直樹?」友人の鈴木由紀が心配そうに尋ねる。
直樹は必死にその影を忘れようとしたが、心に不安が広がる。
倉庫の奥に進むと、古ぼけた鏡が置かれていた。
鏡は曇っていたが、何かが映り込んでいるように思えた。
直樹が近づくと、そこにはまた「助けて」と呼ぶ声が響いた。
「もう帰ろうよ、ここは変だ」と飛び出そうとしたところ、甲高い音が鳴り響き、倉庫の扉が突然閉まった。
彼らは驚き、戸惑った。
暗闇の中で、彼らの心は不安に満ちる。
「ちょっと落ち着こう、何か方法を考えよう」と直樹が言ったが、もはや逆境に立たされていた。
その時、ふと気づくと、鏡の中には以前見た影とは異なる、明確な姿が映し出されていた。
それは、片方の目が異常に大きい少女の顔だった。
彼女は「私を助けて」と涙を流しながら訴えかけ、眩い光を放っていた。
その光景に、直樹は思わず息を飲む。
「こ、これって本当に…」翔は震えながら口を開いた。
「まさか、昔この倉庫に閉じ込められて…」その言葉が口から出ると同時に、倉庫の空気が一層冷たく感じられ、友情の絆が揺らぐような感覚がする。
「ここにいる間に何かを伝えたいのかもしれない」と由紀が言った。
その瞬間、直樹は急に彼女の言葉が胸に染み込んでくる気がした。
影の少女の願いを叶え、そして彼女の存在を忘れないことがどれだけ大事かを理解した。
仲間たちは不安を乗り越え、直樹は自分の勇気を振り絞り、鏡に向かって叫んだ。
「私たちには、あなたのことを忘れない、絶対に!」その瞬間、倉庫全体が震え、近くにあった物が次々と倒れる。
強力な風が吹き抜け、倉庫の扉がわずかに開いた。
彼らは一斉に駆け出し、外に逃げることができた。
外に出たとき、直樹は振り返る。
倉庫の中では少女の影が、微笑みながら彼らを見送っているようだった。
彼らは今後、彼女のことを常に思い出し、忘れないことを誓った。
そして、大学生活の中で得たこの経験は、彼らの友情を深める一つの試練となり、これからも語り継がれることとなった。