「倉の中の永遠」

倉の奥深くには、忘れ去られた物が数多く積み上げられていた。
埃をかぶった古い箱や、色褪せたポスター、そしてどこか懐かしい匂いを放つ家具たち。
倉は長年、使われていなかったが、村の人々は不思議とその中に足を踏み入れることを避けていた。
彼らの間には、「倉の中には、永遠に戻らぬ者たちがいる」という噂があったからだ。

ある日、一人の若者、翔太が倉の中を見ることに決めた。
翔太は好奇心旺盛な性格で、噂にとらわれず自らの目で確かめることを望んでいた。
彼は友人たちに「大丈夫、何もないよ」と言い残し、倉の扉を開けた。
その瞬間、古い木のきしむ音が耳に響き、薄暗い空間が前に広がった。

倉は意外にも広く、奥には何かが光を反射しているような音が聞こえた。
翔太はその音に導かれるように、少しずつ奥へ進んだ。
だが、行くほどに周囲はどんどん不気味な雰囲気を醸し出し、まるで何かが彼を見つめているかのようだった。

最深部に辿り着くと、翔太は一つの古い箱を見つけた。
箱は豪華な装飾で飾られ、不気味な程に美しかった。
「これは何だろう?」と考えた翔太は、恐る恐る箱を開けた。
すると、中から黒い煙が立ち昇り、瞬間的に彼の目の前には一人の女性が現れた。
その女性の名は、彼の記憶にある「えり」という名だった。
翔太の近所に住んでいたその女性は、数年前に行方不明になっていた。

「翔太……私を、助けて……」と、えりは切実な声で訴えた。
彼女の姿は、薄明かりの中で青白く、美しさを保っていた。
しかし、その目には常に何かを求める怨念のような光が宿っていた。
翔太は驚き、恐怖を感じつつも、彼女が元気であることに喜びを感じた。
彼はすぐに彼女を助けようと決意した。

だが、えりの言葉には続きがあった。
「私の呪いは永遠に継続するの……この倉から出ることはできない。代わりに、あなたがここに留まる必要があるの……」

翔太は驚愕した。
「まさか、私がここに留まることで、君が解放されるというのか?」そんなことが本当にできるのだろうか。
彼は心が揺れ、恐怖と同時に強い同情を感じた。
だが、えりが話す声は次第に不気味さを増し、その美しい笑顔は歪んでいった。

「私を助けて……あなたも、ずっとここにいましょう」と、えりが囁く。
その瞬間、倉全体が震え、翔太は意識が遠のくのを感じた。
彼は抗って逃げ出そうとしたが、暗闇が彼の足を引き止めた。
ぐんぐんと吸い込まれるような感覚に襲われ、彼の意識は徐々に倉の闇に溶け込んでいった。

その後、村ではまた一人、行方不明者が出た。
倉の中に足を踏み入れた翔太は、もう戻ってこなかった。
彼の友人たちは彼を心配し、再び倉を訪れたが、そこには彼の姿はなく、ただ埃をかぶった古い箱が一つあった。
倉の奥からは、彼らには聞こえない恐ろしい叫びが響いていた。

時間が経つにつれ、行方不明になった人々のことは村の記憶から薄れ、倉は再び忘れ去られた。
しかし、その倉の奥深くでは、翔太とえりが永遠に囚われ、彼らの声が小さく響き続けていた。
彼らが掴み取ったものは、ただの執着と呪いだけだった。

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