「メリーゴーランドの亡霊」

ある日のこと、大学生の健太は友人の真紀と共に、最近話題の廃墟となった地元の遊園地に冒険に出かけた。
地元の人々には「亡霊の遊園地」として知られ、そこにはさまざまな都市伝説が存在していた。
健太は肝試しの一環として、その噂の真相を確かめたいという思いが強かった。

遊園地の入口に立つと、古びたゲートが不気味に青白い光を放っていた。
真紀は少し怖がっていたが、健太の好奇心に引かれて一緒に入ることにした。
遊園地内には、色あせた乗り物や朽ちかけた建物が立ち並び、静まり返った空気が二人を包み込んだ。
何かがそこにいるような、冷たい感覚を覚えた。

時折、ウィンウィンという風の音が聞こえ、それとともに遠くから懐かしい鳴き声のような音が響いていた。
健太はその声に興味を惹かれ、真紀を誘って音のする方へ向かうことにした。

「やめた方がいいよ、あれはきっと何か良くないものの声だと思う…」真紀は心配そうに言ったが、健太はそんな彼女の言葉を無視した。
彼にとっては、この場所の真実を解明することが重要だった。

しばらく歩くと、古びたメリーゴーランドが見えてきた。
真紀は恐怖に体を震わせていたが、健太は胸の高鳴りを感じていた。
近づくにつれて、鳴き声は徐々に大きくなり、不気味なリズムを刻み始めた。
その瞬間、健太の心に一つの考えが浮かび上がった。
もしこの遊園地の背後に潜む秘密を解き明かせば、何か特別な冒険が待っているのではないかと。

「真紀、一緒に乗ってみようよ、もしかしたら何かがわかるかもしれない!」健太はメリーゴーランドに乗ることを提案した。
真紀はさらに不安を募らせたが、なんとか彼に引きずられて彼女も乗り込んだ。

健太がレバーを引くと、メリーゴーランドはゆっくりと回り始めた。
しかし、回り続けるにつれて、最初は軽快だった音が次第に何か重苦しい調子に変わり、そして音が鳴り響くたびに視界が暗くなっていくのを感じた。
周囲の風景はまるで壊れた夢の中のように歪んだ。

「健太、早く降りよう!何かおかしい!」真紀が叫んだ。
しかし、その声も次第に消えてしまった。
健太も恐怖に駆られたが、なぜかもう一度引き寄せられるようにメリーゴーランドのレバーを引いてしまった。

その瞬間、周囲が一変した。
メリーゴーランドは回転速度を上げ、健太と真紀の周りに影のような存在が現れ始めた。
それは遊園地にまつわる過去の悲劇を象徴するような無数の顔だった。
すべての顔が彼を見つめ、悲しみや怨念を滲ませていた。

「私たちは…あなたを待っていた。責任を取って、私たちを解放して…」どこからともなく、無数の声が響く。
その声はまるで、彼らの苦しみを象徴するかのように耳に残った。

突然、メリーゴーランドが急停止し、健太はその場に倒れ込んだ。
目の前には真紀の姿が薄れていくのを感じた。
彼は彼女を守ろうとしたが、力が入らずにただ見つめることしかできなかった。
真紀はまるで幻のように消えていったのだ。

「これが償いだ」と健太は自分に言い聞かせた。
彼は自身が踏み込んだことが、過去に何かを壊してしまった原因だと気づいた。
彼らの声や悲しみは、一度解き放てば戻れないもので、決して忘れられない記憶として脳裏に刻まれる。

目が覚めたとき、健太はまだ遊園地の中にいたが、周囲はもう静まり返っていた。
真紀の姿も、他の人々の姿も消え去っていた。
彼は一人きりの世界に残され、存在しないはずの音が遠くから聞こえる。
彼はその音に耳を傾けた。

「壊れた遊園地の告げる鳴き声」とそれは名付けられ、彼は永遠にその声と共に過ごす運命を背負わされることになった。

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