「トンネルの約束」

春の訪れが近づく頃、修は友人たちと共に母校のトンネルに足を運ぶことにした。
そのトンネルは、昔から不気味な噂が絶えなかった。
地元の人々は、「かつてここで命を落とした者たちが、光を求めて彷徨っている」と語られていたのだ。

修はその日、思い出と共に懐かしい気持ちを抱えていた。
しかし、トンネルに近づくにつれ、かすかに何かが彼の心を不安で締め付けてくる。
すでに夕暮れになり、薄暗くなったトンネルに足を踏み入れる時、友人たちは楽しげに笑っていた。

「心霊スポットって、本当に何かいるのかな?」と一人が言うと、他の友人も賛同するように頷いた。
しかし、修はただ黙っていた。
彼にはかつての記憶があり、トンネルに入ることが恐ろしい意味を持つことを知っていたからだった。
数年前、彼はこのトンネルで一人の友人を失っていた。
その名は由紀。
彼女はトンネルの奥まで行くと言って、帰らなかった。

「大丈夫だよ、行こう!」と友人たちが口々に言いながら、修をトンネルの奥へと押し進めていった。
彼は重苦しい気配に包まれたが、笑顔を作り、彼らに従った。

トンネルの中は寒く、湿気が全身を包み込んだ。
光を求める者たちの声が、耳の奥で響いているように感じた。
修の心は高鳴り、あの日のことが頭をよぎる。
由紀がいなくなった瞬間、彼は一生背負うことになる運命を感じていた。

仲間たちは騒がしく話していたが、修は次第に言葉が耳に入らなくなった。
彼の心には、由紀の笑顔が浮かんでいた。
そしてふと、彼の目の前に何か影が映る。
冷たい風が通り抜け、彼の背筋を凍らせた。
影は、まるで由紀の姿のように見えた。

「由紀…?」思わず口から漏れた。
彼の声に反応するように、影は微かに揺れたように思えた。
驚きと動揺が入り交じる。

「修…助けて…」それは由紀の声だった。
まるで深い井戸の底から、彼を呼ぶかのように響いていた。

修は恐れを克服し、影に向かってすすみ寄ったが、仲間たちは気づいていない。
さらに影は一歩、彼に近づいてきた。
まるで彼を再び呼び寄せているようだった。
修の心は希望と恐怖でざわめき、彼は身動きがとれなくなった。

「もう帰れない…ここは私の場所なの…」彼女の声はただの囁きではなく、切実な感情を伴っていた。
修の心は重く、過去の出来事が再び蘇る。
彼は由紀を守れなかった。
トンネルの奥で彼女は孤独に過ごしていたのだ。

友人たちが楽しげに笑う中、修の目の前に由紀の姿が鮮明に浮かんだ。
彼女の顔は涙に濡れ、悲しみに満ち溢れていた。

「ここにいる限り、私は助けられない…あなたたちが来るのは、私を解放するためなの?」修は震える声で尋ねる。
由紀は微笑みを浮かべるが、その瞳は何かを訴えている。
彼女の存在が、過去の重荷に結びついていることを修は理解した。

「行かないで、私を助けて…」その言葉に、修は涙が溢れた。
彼は自分が過去を背負っていることを感じ、由紀を解放するために何かをしなければならないと決意した。

トンネルの奥で、修は自らの思いを告げた。
「由紀、二度と一人にはさせない。今は私が守るから。」

その瞬間、空気が弾むように震え、由紀の姿が次第に薄れていった。
修は彼女を再び失う恐れと希望の中で、彼女を手放す決断をした。
その後、仲間たちの声が現実に戻してくれるかのように響き、トンネルの奥から足を引きずるようにして進んでいく。

彼は、過去の痛みを背負ったまま、光の方へ向かって歩き出した。
生きている限り、彼女の思いを忘れずに。

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