ある日のこと、トンネルの近くにある古い村で、村人たちの間で語り継がれている話があった。
この村には「護」という名前の男が住んでいた。
彼は若い頃から、不思議な現象に興味を持っていた。
特に、村の外れにあるトンネルには、誰も近づかないようにと警告されていたが、彼はその謎を解き明かすことを決意した。
ある晩、護は月明かりの下、トンネルの前に立っていた。
周囲は静まり返り、風の音すら聞こえない。
彼は深呼吸をし、後戻りすることをためらいながら、トンネルの中へ足を踏み入れた。
すると、まるで何かが彼を引き寄せるかのように、冷たい空気が彼の体を包み込んだ。
トンネルの中は暗く、壁には苔が生えている。
護は懐中電灯を点け、その beam が照らし出す先を進むことにした。
しかし、進めば進むほど、周囲の空気が異常に重く感じられ、まるで何かが彼の背後に停まっているかのような感覚が襲ってきた。
護は振り返る勇気が出ず、ただその場で立ち尽くしていた。
「何かいるのか?」と心の中で問いかけながら、彼は強く自分に言い聞かせた。
だが、何かが原因で動けなくなったかのように、身体は硬直してしまった。
彼の頭の中には、周囲にある不気味な気配が一層強まっていくのを感じた。
そのとき、ふと彼の目に映ったのは、トンネルの奥からかすかに光が漏れ出ていることだった。
護は、それを目指して心を奮いたて、進むことにした。
しかし、その光が近づいていくにつれて、彼の心臓はドキドキと高鳴り、急に恐怖が心を襲った。
何か良からぬことが起こるのではないかと思い始めた。
トンネルの奥にたどり着いた護は、目の前の現象に驚愕するしかなかった。
そこには、無数の人影が立ち並んでいた。
彼らはかつてこの村に住んでいた人々で、瞳を虚ろにしながら、護に向かって何かを訴えかけているようだった。
彼の心に恐れが広がる一方で、彼は彼らの声に耳を傾けてみた。
「助けてほしい…」その言葉は、まるで彼の内側から湧いてくるように響いた。
護はその声に引き寄せられるように、さらに近づいて行った。
だが、近づくにつれて、彼の胸に重くのしかかる感覚が増していった。
それは、彼がこの村に触れた因果のようなものだった。
人々の亡霊は、護に何かを求めている。
その理由がわからぬまま、彼は意識を失ってしまった。
次に目を覚ましたとき、彼はトンネルの外に転がっていた。
周囲はすっかり夜に包まれ、月の光だけが彼を照らしていた。
村に戻ると、すでに村人たちが彼を探していた。
護はトンネルでの出来事を話すことを躊躇したが、秘密のようなものが彼の心に蓄積されているように感じた。
あの人々の哀しみや苦しみの声が、彼の内側で鳴っているかのようだった。
それ以来、護は依然として村で普通に暮らしていた。
しかし、夜の静寂の中で彼がトンネルを思い出すたび、彼の心には不安が広がり続けた。
時折、彼は夢の中であの人々の声を聞くことがあった。
「助けてほしい…」その言葉の裏には、彼が気づいていない因果の繋がりが、静かに影を落としているのかもしれないと感じざるを得なかった。
夜になるたびに、彼はその影に囚われることを避けられず、苦悩の中で目を閉じ続けるのだった。