「しらたま姫の橋」

小さな村に「し」という名前の静かな夜が訪れると、そこには子供たちが集まって、様々な遊びを楽しんでいた。
しかし、その村には古くから語り継がれる恐ろしい伝説があった。
それは「しらたま姫」という幽霊の話だ。
この幽霊は、昔々、村に住んでいた美しい娘で、若くして命を落としたと言われている。
彼女は毎晩、月が照らす橋の上で待っているという。

ある日のこと、子どもたちは「しらたま姫」を見ようと、支度を整えた。
リーダー格の亮太は、夜が更けるのを楽しみにしていた。
「今夜は絶対に彼女を見てやるぞ!」と声を張り上げ、仲間を鼓舞する。
一緒に来ていた友達の陽子は「やっぱり怖いなぁ」とつぶやいたが、皆の興奮に不安を隠すことができなかった。

夜になると、月の光が村を照らし、どこか神秘的な雰囲気が漂っていた。
子どもたちは村の外れにある小さな橋に到着した。
誰もがドキドキしていたが、亮太としてはこの瞬間を最高の冒険だと感じていた。
何かしらの兆候があれば、すぐに駆け出すことができるように、全員が緊張の糸を張り巡らせた。

「ほら、みんな。お祈りしよう。しらたま姫に会えるように」と亮太が言い出すと、仲間たちは一緒に目を閉じて手を合わせた。
しかし、陽子だけは何かを感じていた。
「何か、変な気配がする…」と小声でつぶやく。
周囲が静まり返り、風だけがかすかに吹く中、亮太はその声を無視し、ただ先へ進むことを望んだ。

時間が経つにつれて、突然、薄暗い橋の向こう側に白い影が現れた。
それはまるで人の形をした白に光り輝いていた。
「しらたま姫だ!」と誰かが叫ぶ。
子供たちは興奮しているのに、陽子は恐れで体が震えていた。
影はゆっくりと近づいてくる。
陽子は背後に引っ込んでしまい、「行きたくない」と心の中で叫んでいた。

「皆、待って!」陽子の声が響くが、亮太はそれを聞かずに進んでいった。
その時、影が一瞬だけ消えた。
再び現れたとき、そこには血のような赤い光とともに、「あなたたち、遊びに来たの?」と低い声が響いた。
子供たちは固まった。
だが、亮太はその正体が「お化け」だとは思わず、「私たちは友達だよ!」と声を大にした。

「友達…?昔の友達?それとも今の子供?」影は不気味に問いかける。
亮太は戸惑いながらも答える。
「今の子供!ほら、君と遊びたいんだ!」

その瞬間、強烈な風が吹き抜け、まるで何か恐ろしいものが彼らの背後に迫っているようだった。
陽子は恐れをなずき、泣き虫の友達、春樹もこっそり後ろを振り返った。
しかし、他の仲間たちは亮太を追いかけ、橋の真ん中で動けなくなっていた。
彼らの目の前には、しらたま姫の鬼気迫る表情が浮かび上がっていた。

「私は更に何かを求めている。誰かを私の代わりに…」彼女の声が響く。
驚愕する子どもたち。
リーダーの亮太もとうとう言葉を失った。
その瞬間、子どもたちは恐れに駆られて全力で逃げ始めた。

橋を渡りきった頃には、陽子は泣き崩れ、春樹はおびえたまま立ち尽くしていた。
「なんで、あんなことをしたの…」と陽子は言った。
亮太はその言葉に胸が痛んだ。
「ごめん、でも…しらたま姫に会いたいって思ったんだ」

この出来事以後、子どもたちの中には、決して「しらたま姫」の存在を侮らない者が現れ、毎晩のように橋を訪れる者はいなくなった。
彼らはあの日、命を懸けた遊びに挑んだことで、その恐怖を体験し、幽霊の威厳を忘れなかったのだ。
村にはまた静かな夜が訪れるが、あの白い影は、今でも村の静寂の中で待ち続けている。

タイトルとURLをコピーしました